A statue of Winston Churchill is silhouetted by Big Ben and the Houses of Parliament in central London on June 24, 2016. (c)AFP/Niklas HALLE'N

 「美しい景色を探すな。景色の中に美しいものを見つけよ」

 これは画家、ゴッホの言葉である。

 人はとかく美しい景色を探そうとする。見つけたその景色をしばらく堪能すると、また新たに美しい景色を探そうとする。

 美しいと思えない景色は見ようとしない。ましてや美しいと思えない景色の中に美しいものを見つけようとはしない。

 ただ、経営コンサルタントとして様々な人の悩みの相談に応じる中で、人は美しいと思えない景色の中に美しいものを見つけることができた時、悩みに立ち向かうための活力を得ると感じている。

自己破産直前で見えた景色

 ある経営者の方からこんな話を聞いた。

 ビジネスが熾烈な価格競争に巻き込まれ、商品の値段は毎年下がる一方で、従業員に対しては年功序列的に昇進と昇給を行わなければならない。その結果、年々利益は減り、黒字から赤字へ転落。

 ビジネスをすればするほど資産は減り、自分の財産を持ち出して何とか経営を維持することに。銀行からの借入も借りられるところまで借りた。それ以上の借入はどこの銀行に行っても断られた。

 いつか来ると分かっていた限界が間近に迫った時、自己破産を考える。

 夜も眠れず、精神的にも破綻寸前の状況に陥る。この苦しみから解放されたい、どうにかこの状況から脱却したい。そんな一心で始めたのが、日記だった。

 ぎりぎりの精神状態で過ごす1日の中に、嬉しかったこと、楽しかったこと、幸せを感じたことを見つけ、日記に書くようにした。

 初めはつらい日々の中にそういったことを見つけることができず、筆が進まなかった。しかし、日記に書かなければいけないので、何とか見つけようと意識するようになった。

 そして、1日の終わりに日記をつける。毎日毎日欠かすことなく日記をつけ続けた。

 すると、1日の生活の中に「嬉しい」「楽しい」「幸せ」と感じられることを見つけることができるようになってきた。ほんの些細なことである。