苦しい時にどう振る舞うか。ここに人の本性が出る。これまでいろいろな人と一緒に仕事をしてきて、そう感じる。
サラリーマン時代、私も仕事をする中で幾度となく窮地を迎えたことがある。自分一人では抱えきれなくなった際には、深刻な面持ちで上司に相談したものだ。
相談の内容によっては上司も責任者として窮地を迎えることになる。この場合の上司の反応は様々である。
同じく深刻な面持ちになって重い空気になる上司もいれば、ピリピリと感情的になりやすい上司もいる。そんな中、ある上司の反応は今でも強く印象に残っている。
重い相談にユーモアで応える上司
重い相談をした際にも、私の説明を聞き終えると、一言、気の利いたユーモアで笑いをはさむ。それから、「さて、どうしようか」と一緒になって考えてくれる。
この上司の対応によって、私を含め多くの部下は落ち着いて問題解決にあたることができた。この上司は窮地を迎えても取り乱すことなく、ユーモアを忘れなかった。
その対応能力の高さから、特に難しい案件を任される人だった。そして、この上司を慕う部下は多く、この上司のチームには一体感があった。
窮地における振る舞い、そこには本性が出るため、リーダーシップや信頼関係に大きく影響する。
仏教に「顔施(がんせ)」という言葉がある。仏教では布施は行であり、他人を助け、施しをすることをいう。布施というとお金を寄付するというイメージがあるが、お金がない人でもできる布施がある。
その1つが顔施である。
顔施はお金の代わりに「笑顔」を施す。笑顔に触れれば人の心は和み、温かくなる。お金はない、しかし笑顔なら施すことができる。そうやって昔の貧しい仏教徒は笑顔を施し続けた。