いよいよ夏本番。都心のビルの谷間にも、セミの声が響き渡っています。ミーンミンミンとシャーシャーシャーとジージージーが入り混じったあの暑苦しい大合唱は、日本の夏の象徴です。

セミは、殻を破って生まれ変わる

 子供の頃に繰り返し読んだ昆虫図鑑には、「セミの幼虫は土の中で7年過ごす」と書いてありました。小学校の期間より長い間、地中にいるなんて、セミってすごいなあと素朴に感動したものです。

 ただ近年ではセミの飼育技術が向上し、実際の幼虫期間はもっと短いことが分かってきたそうです。それによると、ツクツクホウシは1~2年、ミンミンゼミやアブラゼミは2~4年。かなりスケールダウンした感じでちょっと残念ですが、それでも相当長い時間には違いありません。

 それほど長いこと地中で生きていた虫が、ある日、地上に這い出てきて、一夜にして姿を変える。成虫になった彼らは、大音響を発しては空を飛び回る、夏の主役です。

 生物学用語で「変態」と呼ばれるこのプロセスで、セミは文字通り、殻を破ります。幼虫の姿をした外殻を脱ぎ捨て、全く新しい姿へと生まれ変わるのです。

「殻を破る」ことにおいて、セミは実に、見事な仕事をする。

 木の枝に残された抜け殻を眺めながら、私は時折、そんなことを考えます。