中国は東シナ海の日中中間線付近でも、日中合意を無視して一方的にガス田開発を進めている。
「防衛白書」は早い段階から、「中国はわが国を含む周辺諸国との利害が対立する問題を巡って、高圧的とも指摘される対応を示すなど、今後の方向性について不安を抱かせる面もある」と指摘していた。
米議会の諮問機関「米中経済安全保障調査委員会」も年次報告で、中国が尖閣諸島の周辺海域で「軍事、民間の両面でプレゼンスを静かに増大し続けている」(産経新聞27.11.19)と警鐘を鳴らしていた。
こうしたことが明示的になったのが2008年12月8日、中国が海洋調査船2隻(海監46号、海監51号)を尖閣諸島の日本領海内に侵入させたことである。2010年9月7日には、尖閣諸島沖で不審船の取り締まりをしていた海上保安庁所属の巡視船に、中国漁船が追突する事案が発生する。
日本は逮捕した船長たちを法的手続きできちっと裁き、管轄権を明確にする絶好のチャンスであったが、中国が繰り出すあの手この手の圧力に菅直人政権は腰砕けとなる。
この対中軟弱姿勢が、中国に一段と大胆な行動を取らせる誘因になった可能性がある。
爾後、中国が問題を起し日本が抗議すると、中国は「古来から中国の領土」という謳い文句で、あべこべに日本が事案や騒ぎを起こしたと理不尽な報道官コメントを国際社会に向けて行い、圧力をかける状況を繰り返す。
安倍晋三政権になってからも、公船の接続水域侵入が続き、領海侵犯もしばしば起きている。しかし、安保法制成立以後は長期政権を視野に入れ始めたのか、対中外交で軟弱姿勢に転じたのではないかと仄聞する。
「隣国への情け」などあり得ない
追突事案の半年後の2011年3月11日、日本は千年に一度とも言われた東日本大震災に見舞われる。茫然自失の菅政権は国の守りそっちのけで、自衛隊の半数を大震災対処に当たらせる未曾有の態勢をとる。
権謀術策で生き延び、隣国の混乱は自国のチャンスとみる中国に、日本の困惑への思いやりなどあるはずもない。国家海洋局所属のヘリが3月26日、海自艦「いそゆき」に水平約90メートル、高度約60メートルに接近し周回する威嚇行動を取る。
さらに4月1日にも同局の航空機が同じ間隔まで接近周回する極めて危険な飛行を行い、許し難い威嚇を行う。
しかし、日本政府はこうした中国の意図的と思われる威嚇行動に対して、何らの対応行動をとることもなかった。日本で初めて起きた福島第一原子力発電所のメルトダウン食い止めに汲汲であったし、こういう時期の中国の威嚇行動など思いもよらなかったのかもしれない。
日本のこうした対応状況は中国軍にしっかりメモリーされ、尖閣諸島周辺における中国の行動はエスカレートしていく。本来は国が対処すべきことでありながら放任状態におかれているため、都知事の石原慎太郎氏が大きな危惧を抱き動き出す。