「ポルポト政権下の映画人粛清が招いた悲劇『シアター・プノンペン』(2014)。内戦の実像を伝えようともがくシリア映画人の姿がある『シリア・モナムール』(2014)。ウルグアイのシネマテークの様子が見て取れる『映画よ、さようなら』(2010)。1940年代末から50年代の米国に蔓延した赤狩りという病に蝕まれたハリウッドを描く『ヘイル、シーザー!』(2016)と『トランボ ハリウッドに最も嫌われた男』(2015)・・・。

 様々な国の、様々な映画事情を描いた映画の公開が続いている。

 オランダ映画『ハリウッドがひれ伏した銀行マン』(2014)もそんな一作。

 映画界の枠組に大きな変化をもたらした「プリセールス」と呼ばれるシステムを生み出したロッテルダムの銀行マン、フランズ・アフマンの半生を追ったドキュメンタリーである。

 作品が完成する前に、配給権を取引するプリセールスは、独立系の製作会社でも資金が調達しやすくなり、結果、大作や新奇な作品も撮れるようになる。一方、配給会社にとっても、独立系でも話題作を配給するチャンスが生まれる。

映画製作の舞台裏をおちょくったコメディ

 メジャースタジオによる市場支配に風穴をあけたのである。銀行マンのアフマンが行うのは融資。だから、映画が予定通り完成するよう資金面の責任を負う「完成保証人」や保険会社といった存在も重要となる。

 アフマンが関わった900本余りの映画リストには、1980年代、破竹の勢いだった独立系製作会社キャノン・フィルムズの作品も含まれている。イスラエル出身のメナハム・ゴーランが従兄弟ヨーラム・グローバスと営んだキャノン・フィルムズは、その派手な宣伝手法で、作品、企画を売り込み、娯楽映画を量産し続けた。

 そんな交渉の場でもあるカンヌ国際映画祭が舞台の『ザ・カンヌ・プレイヤー』(1996/日本劇場未公開)は、映画製作の舞台裏をおちょくったコメディ。

 大物プロデューサーが、芸能記者を利用し、架空の脚本とニセ脚本家の評判をでっち上げ、わずか数日で、元タクシー運転手を映画祭の主役に祭り上げる。

 「才能」に群がる俳優、監督、製作会社、配給会社、投資家。ゴーランも自身役でその1人として登場、プロデューサーの誘いに乗る。

 そんなカンヌ国際映画祭で、今年、テリー・ギリアム監督が、念願の企画、「The man who killed Don Quixote」の製作に10月から入ることを明かした。

 この企画の始まりは20年近く前。そのときの様子は、ドキュメンタリー映画『ロスト・イン・ラ・マンチャ』(2002)で見ることができる。