「我々はドルペッグ制の変更を検討していない」──5月29日、サウジアラビアのアルコリフィー通貨庁(SAMA)長官は、アルアラビア(アラビア語国際ニュース衛星放送)のインタビューにこう答えた。
SAMAは1952年に設立され、各国の中央銀行と同様、物価や金利の安定を主目的としている。またそれ以外に、日本では財務省の管轄である外貨準備高や為替相場の管理などの役割も担っている。
SAMAはこれまで「ドルペッグ制の変更にはなんのメリットもない」として自国の為替制度の変更を否定し続けてきた。しかし2014年半ばからの原油価格下落を受け、ヘッジファンドなどの投機筋は「サウジアラビア政府はドルペッグを解除せざるをえない状態に追い込まれる」と見ている。
その代表格はフランスのメガバンク、ソシエテ・ジェネラルである。原油価格が1バレル=20ドル台と低迷していた2016年2月に、「リヤル(サウジアラビア通貨)の早期切り下げの確率は少なくとも25%ある。原油価格が今年いっぱい現状付近で推移すれば、切り下げ確率は40%に高まる」との見方を示した。
リヤル切り下げは政治の不安定化を招く
一方、中東専門家の間では、「リヤルを切り下げた場合、サウジアラビアの政治があまりにも不安定化しかねない。これまで30年間続けてきたドルペッグ制を維持する以外に、選択の余地はないのではないか」との見方が一般的である。