東京・霞が関の経済産業省。通産省時代のターゲティング政策は失敗の連続だった(出所:Wikimedia Commons)

 かつて小泉改革で中心的な役割を果たしたのが、毎年6月ごろ出される「経済財政運営と構造改革に関する基本方針」だった。これは夏の概算要求に先立って内閣が予算編成の骨格を示すもので、骨太の方針という愛称で呼ばれた。

 しかし5月18日に発表された今年の経済財政運営と改革の基本方針は「骨抜きの方針」だ。肝心の財政運営の骨格を示す第4章が白紙になっているからだ。これは「安倍内閣は財政再建を放棄した」と解釈されてもしょうがない。

「官僚たちの夏」は終わった

 今度の「成長戦略」では「名目GDP(国内総生産)を2020年度までに600兆円にする」という目標を掲げている。あと5年でGDPを100兆円も増やすには毎年4%の成長が必要だが、具体的な政策として並んでいるのは「第4次産業革命」やらIoTやら人工知能やら、ビジネスマンなら誰でも知っているバズワードだけだ。

 こういう特定の産業に役所が補助金を投入して育成するターゲティング政策は、城山三郎の小説『官僚たちの夏』の世界だが、成功したことがない。小説のモデルは1962年に通産省が立案した特振法(特定産業振興臨時措置法)だが、時代錯誤の統制経済だとして民間の反発をまねいて挫折した。

 しかし特振法の精神は通産省の行政指導として残り、これを制度化したのが、大型プロジェクト(大型工業技術研究開発制度)と呼ばれる制度だった。その唯一の成功例は、1976年から始まった「超LSI技術研究組合」で、これは日本の半導体産業が世界を制覇する要因となった。

 この成功体験で「大プロ」には巨額の予算がつくようになり、中でも最大のプロジェクトが、1982年に発足した第5世代コンピュータだった。10年間で1000億円を投じて人工知能をつくろうというもので、全世界の注目を浴びた。