共和党ドナルド・トランプ氏(以下トランプ)が11月の本選挙で勝ったとしたら――。
トランプは、日米同盟を再考して日本から米軍を撤退する選択肢をほのめかしている。さらに日韓両国の核兵器保有の可能性にも言及している。
しかしこれまでの日米関係を多角的に眺めると、トランプ政権が誕生したとしても、日米関係が本質的に変化するとは考えにくい。
先日、フジテレビの朝の番組で私と同席した自民党の下村博文・前文科相は、「トランプ氏が大統領になったら、いま発言しているようなことは起こらない。そんなに簡単に変わらない」と政治家としての経験を踏まえた考えを口にしていた。
あまりにも低い実現可能性
過去の米大統領の言動を選挙前と選挙後で比較すると、選挙前の発言は「選挙に勝つため」と理解した方がいい。政権発足後、トーンダウンしたり、公約に手をつけなかったりすることがあるのだ。
日米間には実務レベルで、軍事、外交、貿易面において密接な関係が築かれており、大統領が交代したからといって、すぐに大きな変化が訪れるとは限らない。むしろ、大統領の補佐官たちがブリーフィングを繰り返し、大統領の独走にブレーキをかけることの方が多い。
それでも昨年からトランプが断言調に繰り返し述べている公約がある。その1つが「トランプ・ウォール(トランプの壁)」の建設だ。中南米諸国からの不法移民の流入を防ぐため、メキシコ国境に巨大な壁を築くという。
壁の建設は技術的には難しいわけではなく、堅牢な壁を建造できると豪語する。
トランプは子供の頃から、不動産業に携わった父親に建設現場に連れていかれ、多くの建築物を見ている。それだけに壁の建設という観点だけからは問題がないと考えているようだ。
ただトランプ・ウォールの建設の現実性を調べていくと、可能性は極めて低いという結論に行きつく。