ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、3月14日、「我々の主要な任務は達成された」として、シリアに派遣したロシア軍の主要部隊を3月15日以降撤退させることを命じた。
そして、プーチン大統領の命令に従い、ロシア軍の航空機「Su-24」、「Su-25」、「Su-34」が3月15日に逐次撤退を開始し、その迅速さは世界を驚かせた。
昨年9月末に突然ロシア軍をシリアに投入し世界を驚かせたのだが、空爆作戦の終了と主力部隊の撤退の鮮やかさに世界は驚いたのである。その撤退のタイミングの良さは見事であると評価せざるを得ない。
なお、ロシアの空爆による戦果は、出撃回数9000回、破壊した石油精製施設・輸送施設209か所、奪還した地域400か所、奪還した面積10000平方キロである。ロシア軍の空爆目標については、下図を参照してもらいたい、青い点で示されている。
一方、米国政府は、ロシア軍の撤退を予想していなかったようで、驚きをもってこの撤退を受け止めた。昨年9月にプーチン大統領がシリアに空軍を投入した時に驚愕したバラク・オバマ大統領やジョン・ケリー国務長官は、プーチン大統領の果断な決断に驚かされ続けている。
シリア問題の主導権を握ったのは明らかにプーチン大統領であり、オバマ政権の対シリア外交は、プーチン氏の果断な行動に対する後手後手の対応になっていると評価せざるを得ない。
筆者にとってプーチン大統領は比較的理解しやすい指導者である。なぜならば、彼の実施する作戦はある程度の軍事的合理性を持っているからである。その作戦を計画・実行するロシア軍の実力も認めざるを得ず、我が国もロシア軍には心して対処せざるを得ない。
しかし、二正面(ウクライナとシリア)作戦という愚を犯したために、ロシア軍の継戦能力の限界が半年程度だと分かったし、ISIL(いわゆる「イスラム国」)によりロシア民航機を爆破され、トルコ空軍の「F-16」により領空侵犯したSu-24を撃墜されるという失態を演じてしまった。
プーチン大統領のシリアでの軍事作戦は高く評価する点もあれば、低く評価せざるを得ない点もあり、この論考では客観的な分析に留意する。