前回は認知症とはどのようなものか、これから高齢者社会を迎える日本にとって、認知症が決して他人事でない現状について述べた。

 今回から複数回にわたり、認知症の人たちとこの社会に私たちはどう向かい合おうとしているのか? という視点から、介護の実態について述べてみたい。

認知症と介護問題

 人はいずれ寿命を迎える。これほど確かなことはない。死因の第1位は癌、2位は心疾患、3位は肺炎であるが、いずれにしても「死」は本人はもちろん、家族や関係者にとっても、不条理な、受け入れがたいものである。しかし、死を受容し、死者との別れの時間を経て、時が悲しみを癒してくれる。

 それに対し、認知症は直接死に至る病ではない。介護を必要とする疾患をみてみると認知症は第2位であり(図1)要介護の疾患には、認知症とそれに関連する疾患が多数を占めている

図1. 介護が必要となった主な原因の構成割合、上位6要因(数値出典:厚生労働省「平成22年国民生活基礎調査」/グラフ:健康づくり推進本部ワーキングチーム1 『高齢者の介護予防等の推進』のこれまでの検討状況まとめ 資料1-1より一部抜粋して使用)
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 高齢者の脳血管疾患や骨折転倒は約3カ月にわたる長期入院の間に、認知症になる可能性が非常に高い。認知症が直接的な死因にはならないものの、次第に症状は悪化し、介護が必要な状態は続いていく。場合によっては亡くなるまでの期間、10~20年にわたり認知症の介護が続くこともある。