株式会社コメダ社長、臼井興胤(うすい・おきたね)氏。   

 1968年に名古屋で創業以来、約50年にわたる歴史を持つコメダ珈琲店。郊外を中心に展開を続け、2003年には首都圏にも進出。この5年間で店舗数は倍増し、2015年11月末現在で全国に657店舗を構えている。フランチャイズ(FC)展開の勢いは止まらない。そんなコメダのホームページに、興味深い文言がある。

「各店地元密着の(不揃いな)個性を発揮しながら日々精進してまいります」

 標準化と画一化が求められるチェーン展開において「個性」と「不揃い」をどう発揮するのか。

前篇に続き、株式会社コメダの臼井 興胤(うすい・おきたね)社長に話を聞いた。

小手先の「標準化」は要らない

 “お茶しよう”

 その言葉を発するとき、どんな気分だろうか。文字通り、お茶やコーヒーを飲みたいというのもあるが、「ちょっと一息つきたい、誰かに話を聞いてほしい・・・」そんな思いが言葉の裏にはあるのではないだろうか。

「失われた10年、いや20年とも言われますが、寝食を惜しんで働くことをよしとする時代は、コーヒーもセルフサービス、テイクアウトの手軽さが重視されていたと思います。でも振り返ってみて、忙しく動き回っている中にどれだけの生産性があったのか・・・。均質化・標準化されたサービスは、日本人の中ではもう通過したものだと思います」

 数百円のコーヒーでプチ贅沢を提供する――フルサービスの形態で、スタッフによる“個のサービス”(詳しくは前篇をご覧ください)に力を入れるコメダには、時代の追い風が吹いていると臼井氏は話す。