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(文:峰尾 健一)

『その科学が成功を決める』『その科学があなたを変える』などの著作で知られるリチャード・ワイズマン博士の新作である。

 幸運、自己啓発、錯覚、説得など心理学に関する研究を続けてきた博士が今回選んだテーマは「睡眠」。なぜ急に睡眠? と思われたかもしれないが、理由は後ほど。

 ワイズマン博士の著作は、豊富な実証的研究が盛り込まれているのが特徴だ。本書でも、睡眠メカニズムの堅苦しい解説ではなく、実際に行われた実験の結果を列挙し解説していくスタイルが貫かれている。

よく眠るための科学が教える10の秘密
作者:リチャード ワイズマン 翻訳:木村 博江
出版社:文藝春秋
発売日:2015-11-13

睡眠不足が深刻な事故に

本コラムはHONZの提供記事です

 何かとやってしまいがちな睡眠不足だが、時に取り返しのつかない事態を招くこともある。スリーマイル島原子力発電所の事故、スペースシャトル・チャレンジャー号の爆発事故、チェルノブイリ原子力発電所のメルトダウン。睡眠不足が深刻な事故に結びついた例は決して少なくない。

 だが重大事故を持ち出すまでもなく、些細な睡眠不足が危険につながることが実験によって示されている。引き合いに出されるのは、2003年にワシントン州立大学で行われた研究だ。その内容は3、5、7、9と被験者を睡眠時間ごとにグループに分け、機敏さを調べるテスト(コンピュータ画面を眺めながら、いくつか点が見えたらすぐにボタンを押す)を行いつつ2週間のあいだ研究室で過ごしてもらうというもの。