岩手県盛岡市の中心商店街に立地している、幣社(さわや書店)の本店。先日、その幣店の左隣数件先に、商店街としては6件目のコンビニとなるローソンがオープンしました(冒頭の写真とは別店舗)。

 つい先月までは、商店街でも老舗の菓子店だった建物。歴史あるその場所に、現代の小売業を代表するコンビニの出店に、時代の変遷を感じずにはいられません。

 他の地方の例に漏れず、衰退し始めている私たちの商店街。全国チェーンのカラオケ店や居酒屋が増え、小売業の店舗が減少しています。

 そんな中、貪欲に出店を重ねているコンビニ業界。物が売れなくなっている現在、その強さの秘密は一体何なのでしょうか?

多様化するコンビニの役割

 その秘密を探るために、まず本書から。

コンビニと日本人 なぜこの国の「文化」となったのか(加藤直美著、祥伝社)

『コンビニと日本人 なぜこの国の「文化」となったのか』(加藤直美著、祥伝社、1620円、税込)

 本書は社会学的な観点からコンビニ業界を取り上げている意欲作です。

 アメリカ発のコンビニが日本に上陸し、様々な時代背景の下、いかに対応しながら進化してきたのか。さらに、宅配サービスやコンビニATMといった新しいサービスを生むに至った経緯を丁寧に追いながら、これからのコンビニの役割を提示しています。

 著者は、流通業界に精通した消費生活コンサルタント。小売業のマーケティングサポートを行っているだけに、日本の人口構成の変化に伴うコンビニの客層の変化のリサーチなど、数多くのデータを提示し、説得力のある構成に仕上げました。

 本書の特長として、先の東日本大震災でのコンビニチェーン各社の対応を詳しく述べている点が挙げられます。被災地への献身的な対応を通して、コンビニは社会的インフラとして日本社会に欠かせない存在になった、と著者は主張します。