仏、空母から初のシリア・イラク空爆 対IS戦を強化

地中海東部に配備された仏空母シャルル・ドゴールから出撃するラファール戦闘機(2015年11月23日撮影)。(c)AFP/ANNE-CHRISTINE POUJOULAT〔AFPBB News

 11月13日にパリで起こった同時多発テロの犠牲者は130人に達した。今回の事件の首謀者は第2弾のテロを実行する直前に特殊部隊に射殺されたとみられるが、まだ1人がベルギーに逃走中とされ、「イスラム国(IS)」の脅威は終わっていない。

 これについて「フランスがイスラムを排除したのが原因だ」などという人々がいるが、これは誤解だ。世界で起こったテロの死者の総数は、2013年で1万6245人。その80%は中東で出ており、今回の事件はヨーロッパで起こったから目立ったにすぎない。イスラム原理主義によるグローバル・ジハードは、世界中で起こっているのだ。

ロシア革命から始まった「非対称戦争」

 このような大規模なテロは、新しい現象ではない。レーニンがロシア革命を行うとき、その参考にしたのは、クラウゼヴィッツの『戦争論』だった。レーニンはその膨大な読書ノートをつけ、来たるべき革命が近代国家を別の国家で置き換えるのではなく、主権国家を破壊する戦いであることを学んだのだ。

 レーニンにとってロシア革命とは、主権国家という枠組を破壊するために「非正規の軍」としての赤軍が戦う非対称戦争だった。それは既存の戦争のルールを無視して農民や労働者を組織したゲリラ戦であり、毛沢東もそれを継承した。

 社会主義は終わったが、ゲリラ戦やテロは終わらない。世界各地で、反政府ゲリラの脅威は拡大している。中でもイスラム原理主義のテロは、ヨーロッパの植民地支配で分断されたアラブを統一する正義の戦いだから、妥協も停戦もない。イスラム学者の中田考氏は、彼らの思想をこう代弁している。

国境の廃止とイスラーム秩序の統合による大地の解放はイスラームの使命にとって必要不可欠な本質なのである。[中略] ごく限られた先進国が地上の富を享受し、大多数の人々が「先進国」から切り離された「発展途上国」の中で生活することを強いられている「領域国民国家」システムが、不正であることは疑う余地がない。
(『カリフ制再興』183~184ページ)

 

 今やイスラム教徒は19億人とカトリックを超え、2030年代にはキリスト教全体を超えると予想される。イスラムの戒律に従い、アラーのために死ねば天国に行けるという教義は単純で、字の読めない民衆にも分かる。それは途上国において救済を低コストで実現するのだ。