この町のスーパーではビールを冷やして売ってはいけないことになっているらしい。喉の乾いた私は絶望して、華僑のレストランに駆け込んだ。
小便くさい麺を仕方なしにすすりながら冷えたビールを頼むことにした。話を聞くと、ちょっと前に酒を飲んで事件を起こすものがあったらしく、買っても外では飲めないように禁止条例だかなんだかが定められたらしい。
首都のカイエンヌでは冷たいビールを売っていたので、この類いの条例はここだけのことかもしれない
とはいえビール自体はスーパーの端っこに売っている。宿の冷蔵庫で冷やして飲もうと、レストランの帰りに埃の積もった生ぬるい瓶を買った。大事に宿まで運んだのに、宿の冷蔵庫は壊れていて、私は再び絶望した。
宿はなかなか不潔で、というより宿の体をなしていなかった。今夜私にはベッドもなければ洗面所もない。ごみ溜めのバラックにハンモックを吊るすだけの寝床に、星は見えなかった。野良犬がやってきてバラックのごみをつつくのをひとりで眺めていた
腐った夜風にハンモックは揺れる。赤道直下・熱帯モンスーン気候の町クールーでは夜もねっとりと生ぐさい。胃がきりきりと痛い。
こんな場所で冷えたビールも飲めないなんて本当にやってられない。