EU、難民12万人の受け入れ分担決定 一部の反対押し切る

ギリシャ・レスボス島にたどり着いた移民や難民(2015年9月22日撮影)〔AFPBB News

  9月29日(日本時間30日)、安倍晋三首相は国連総会一般討論演説で、「シリア・イラクの難民・国内避難民に向けた支援をいっそう厚く」し、実施分を含め、昨年の3倍となる約970億円(8.1億ドル)を拠出することを表明した。

 23日、ブリュッセルで行われた欧州連合(EU)緊急首脳会議では10億ユーロの追加支援が、先だつ内相理事会では、受け入れを4万人から16万人へと増やし、人口や経済規模で分担することが合意に達している。

 しかし、今年すでに50万人が流入、今も続々到着、という現状では、とても追いつかない。観光地として知られるギリシャやイタリアの島々からも、疲れ切ったその姿、小船にすし詰めされたとても現実とは思えない映像が、次々送られてくる。

 そんな地中海に浮かぶイタリアの小島を舞台とした難民をめぐる物語『海と大陸』(2011)の主人公は漁師一家。夏は観光客で賑わう地で、漁のさなか、溺れかけた難民を助ける。

 エチオピアからリビア、そして小船でやって来たのだという。現在、多くは、シリア、イラク、アフガンなどからの人々だが、アフリカからやって来る者も少なくない。

「難民はイメージダウン」

 将来に不安のある漁師、今生きることさえ困難な難民、その日を楽しむためやって来た観光客、三者三様の姿。「観光業が大切な産業の島にとって難民はイメージダウン」と主張する者も登場する。

 厳しい経済環境のなか、現実に国を支える観光業への難民の影響を懸念する声もあるギリシャは、映画以上に深刻なのかもしれない。

 海のない内陸国ハンガリーは、バルカン半島から「西」「北」への入り口となり、難民が押し寄せている。EU域外との国境監視強化が進むなか、フェンスが立てられたことで、オルバン・ヴィクトル政権への批判の声もある。

 そんな映像から思い起こさせられるのが、オルバン現首相も、大きな役割を果たした4半世紀前の民主化へと進む頃のハンガリー。

 1989年5月、ネーメト・ミクローシュ政権が、オーストリアとの間の鉄条網撤去を始め、「鉄のカーテン」に風穴を開けたのである。

 8月、国境の町ショプロンで「汎ヨーロッパ・ピクニック」が開催されるなか、国境検問所の一部が壊され、600人余りの東ドイツ市民が走り抜けた。9月には国境全面開放、世はベルリンの壁崩壊へと進んでいった。