8月16日に内閣府が発表した2010年4-6月期の日本のGDPは米ドル換算で1兆2883億ドルで、中国のGDP(1兆3369億ドル)を下回った。今年中には中国は日本を抜いてGDPで世界第2位の経済大国に躍り出ることが確実視されている。
同16日、米国防省は中国の軍事力動向に関する年次報告書を公表した。
英国で始まった産業革命がついに中国に達した!
報告書では「圧力」や「脅威」といった表現が消え、中国への配慮がうかがえる例年にない抑制されたトーンが気になるところであるが、速度と範囲が著しく拡大した軍の近代化に対し、警戒感を顕わにしている。
中国の近年の経済成長は、18世紀末に英国で始まった産業革命の波が徐々に地球的規模に広がり、ようやく中国に達したことを意味する。
産業革命は工業化を産み、工業化は国力を増進させる。工業化の第1の波に乗り遅れた中国がようやく工業化の道を歩み始めたのだ。廉価な労働力と多額な海外からの投資により著しい経済成長を続け、中国が経済大国として台頭してきたのは歴史的必然と言える。
他方、目覚ましい経済成長を背景に軍事費を21年間連続2ケタ伸ばした結果、1988年に比べて22倍の規模に拡大し、軍事大国としても台頭してきた。
「経済大国は間違いなく軍事大国になる」と米国の元国務大臣ヘンリー・キッシンジャーも語っているが、唯一日本を例外とし、歴史はその正しさを証明している。中国の軍事大国化も歴史的必然なのだ。
中国の軍事大国化は歴史的な必然
中国の経済大国化も軍事大国化も歴史的必然であれば、もはやこの動きを止めることも逆戻りさせることもできない。
だとすれば、いたずらに中国脅威論を唱えているだけでは芸がない。この歴史的必然を前提として、いかに将来にわたって安全保障を確保するかが今問われている。具体策は限られており、手品師がステージでハトを出すような奇策はないだろう。
中国が独善的、排他的な重商主義に陥ることなく、国際法や国際ルールを順守する責任ある民主主義国家になるよう、そして軍事的無頼漢にならぬよう長い時間をかけて誘導する関与政策が、やはり唯一の現実的具体策である。
関与政策は決して容易ではない。台頭する大国は国際ルールを無視したり、現状維持勢力の言うことを聞こうとしないのが普通である。