8月19日、ウクライナ「核燃料」社とロシア「ロスアトム」社は、国際ウラン濃縮センター(アンガルスク市)の株式10%をウクライナ側に売却することで合意した。

 この両国営原子力企業間の合意は、ウクライナの同センターへの参加と引き換えに実現したものである。

 ウクライナ政府はかねて同センターへの参加を表明しており、先の核安全保障サミット(2010年4月)で放棄を表明したウクライナの高濃縮ウランの一部もここへ向かうものと予想されている。

 一般的に、エネルギーを巡るウクライナ・ロシア関係というと、天然ガス・原油に注目が集まるが、原子力も同様に対ロ依存度が高い。

 ウクライナの1次エネルギー供給源の構成比、「2030年までのウクライナ・エネルギー戦略」(2006年採択)を考慮するなら、原子力が対ロ関係において天然ガスと同じく重要となることは間違いない。

 ウクライナはチェルノブイリ原発事故(1986年)の被災国であると同時に、発電の半分を原子力に頼る一大原発国でもあるのだ。

ウクライナの1次エネルギー供給源(%)
  1993 1995 2005 2030(目標)
石炭 30.1 28.7 43.7 33.3
原油 15.7 16.0 12.9 11.3
天然ガス 43.1 43.2 43.7 18.8
原子力 10.5 11.6 21.7 36.6

出所:International Energy Agency, Ukraine-Energy Policy Review, p.349;Enerhetychna stratehiia Ukrainy na period do 2030 roku, p.14.

原子力分野でも攻勢を強めるロシア

 既に記したように、2010年に入り、ロシア政府はウクライナとのエネルギー産業の統合を大々的に推進している。原子力においても、両国間で数十億ドル規模の契約が続いている。

 最近の両国間の主な原子力契約は次のようなものがある。

●2009年10月 ロシア・アトムストロイエクスポルト社は建設途上のウクライナ・フメリニツキー第3号、4号炉の完工計画を落札

●2010年6月1日 ロシア・TVEL社はウクライナ・エネルゴアトム社(全原発を傘下に収めるウクライナ国営企業)と2011年以降の長期核燃料供給契約を締結

●2010年6月9日 両国政府は同原発第3・4号炉完工への融資協定を締結、ロシア政府系金融が融資を担当