ビクトル・ヤヌコヴィッチ政権誕生後、ロシア政府のウクライナへのアプローチが活発化している。4月末にはウラジーミル・プーチン首相が両国ガス産業の合同を提案し、ウクライナ側を驚かせた。

喉から手が出るほど欲しいウクライナのパイプライン

 先のハリコフ条約と合わせて、すわ、「ウクライナの親ロ派大統領の下でロシアは念願のパイプライン獲得か」という論調が立った。

 言うまでもなく、ロシア政府、ガスプロムにとって、年間1785億立方メートルの輸送力を持つウクライナの天然ガス輸送システム(パイプライン、加圧基地、地下ガス貯蔵庫を含むGas Transmission System、以下、GTS)は垂涎の物件である。

 現在でもロシアのガス輸出の8割はウクライナ経由に依存しているし、仮にノルドストリーム(第1期:年間375億立方メートル、第2期:550億立方メートル)が稼働しても、ウクライナの基幹ルートの立場は変わらないからである。

 このGTSは国営企業ナフトハス・ウクライナの1部門を成しているため、両国ガス産業の合同は、ロシアがウクライナパイプラインを管理・運営できることを意味する。

ガスコンソーシアムとは何か

 両国ガス産業の合同といっても、ガスプロムはナフトハスの上流から下流すべてに関心があるわけではない。

 ナフトハス・ウクライナは垂直統合型の国営ガス企業であるが、ガスプロムはかのRosUkrEnergo社を通じてナフトハスの販売部門たる州ガスの株式を所有しているし、ウクライナが輸入する天然ガスはすべてガスプロム経由であるから輸入部門も完全にコントロールしていることとなる。