安倍政権は「日本再興戦略」で2020年における指導的地位に占める女性の割合を30%にするという目標を掲げている。

 女性の地位向上自体は喜ばしいことだが、企業の雇用においては決して簡単なことではない。これを実行しようとすると現行の人事体系に大きな影響が出る。男性社員や高齢者雇用への影響も懸念され、さらには少子化に拍車をかけるのでは、との声まで出始めている。

「制約社員」が抱えるハンディキャップ

 実は日本の女性の就業率は意外に高い。OECD(経済協力開発機構)の「雇用アウトルック2013」によると、日本の25~54歳の女性の平均就業率は69.2%と70%に近く、80%を超える北欧諸国などに比べると低いものの、米国や英国に近い就業率となっている。

 ただし、これは女性の就業率が、主婦パートなど非正規雇用によって上昇している点に問題がある。本来であれば、女性も正社員として就業し、その中で活躍の場を求め、また活躍していくべきだが、日本企業の出世コースに女性が乗るのは難しいのが現実だ。

 この背景には、日本企業がこれまで、勤務時間や勤務場所、業務内容などに制約のない社員(いわゆる「無制約社員」)を正社員とし、その成果により管理職としてきたことが挙げられる。とりわけ、日本人の正社員の労働時間は世界基準から見ても、極めて長く、週休2日制の普及により、平日の労働時間が増加しているのが実態だ。

 しかし、女性の場合には、結婚、出産、育児という過程の中で、どうしても働く時間帯や場所、業務内容などの制約を抱えることになる(いわゆる「制約社員」)。このため、無制約社員に比べて、仕事の評価という点でハンディキャップを抱えてしまうのだ。