万里の長城。中国に旅行する日本人は減少を続けている

 夏休みを目前にして旅行各社の商戦も佳境に入った。だが、ひとたび中国ツアー商品に目を向けると、売れ行きは相変わらず芳しくない。

 訪中ツアーが活況を呈したのは、北京五輪(2008年)、上海万博(2010年)が開催された頃がピークだった。客室も旅客機も“満席御礼”の札が下がる大ブームを見せた時期もあった。歴史好きの熟年層が細々と支えていた市場に、急発展しておしゃれになった沿海部の都市を訪ねる女性が加わった。

 中国事業に関心を持つビジネスマンも中国行きのツアーを大いに利用した。九州を地盤にするタクシー会社はこれに目をつけ、2011年に中国旅行を事業化。チラシをタクシーの車内に取り付けたところ、たった数カ月で750人を中国に送客することに成功した。

 ところが、2012年9月に発生した反日デモで流れが一気に変わった。「中国は怖い」というマイナスイメージが植えつけられ、たちまち引き潮となった。タクシー会社の訪中ツアーも利用者が激減した。「豪華5ツ星ホテル」を目玉に、2泊3日で5万円という破格のプランを提示したが、それでも20人程度しか集まらなかったという。