東京・秋葉原の免税店、家電量販店は連日多くの中国人旅行客でにぎわう

 中国共産党の幹部は、嬉々として日本を目指す旅行者たちを一体どんな思いで見送っているのだろうか。なにしろ日本に旅行する中国人がかつてない勢いで増え続け、おまけに彼らは帰国すると「日本旅行がいかに素晴らしかったか」を競うようにインターネットで発信し、拡散させるのだ。

 日本政府観光局の発表によれば、2014年1月から8月にかけて日本を訪れた中国人旅行者は前年同期比84%増の154万2400人に達し、すでに年間の過去最高(2012年の142万5100人)を上回った。

 この7月に日本に旅行に来た中国人は28万1200人。これは前年同期比で約2倍の数字である。8月も前年同月比56.5%増の25万3900人が日本を訪れ、7月に続いて台湾、韓国を抑えて単月でトップに立った。

 中国からの訪日旅行者は12カ月連続で各月の過去最高を記録している。このままのペースでいけば年間200万人の大台突破は間違いない。日本政府観光局 海外マーケティング部の鈴木克明次長は、「中国からの訪日旅行者はまだまだこれから増えていくでしょう。いずれは台湾、韓国を抜いて、年間の訪日旅行者数でトップになると見ています」と言う。

 2012年の尖閣国有化、反日デモによって、中国人の日本旅行は一気に冷え込んだが、いまや完全にそれ以前の勢いを取り戻した。日本政府観光局は「航空便の増便やチャーター便の就航」「大型クルーズ船の寄港」「夏の訪日プロモーションの成果」などを、その要因として挙げている。

 しかし、ここで素朴な疑問が湧く。たとえ日本に飛ぶ飛行機が増えても、日本に旅行に行きたいと思わなければ乗らないだろう。日中関係は相変わらず緊張状態が続いている。それにもかかわらず、なぜこれほど多くの中国人旅行者が日本にやって来るのか。その疑問を改めて鈴木氏にぶつけてみた。

政治的対立に左右されない中国人もいる

──日中関係がこれほど悪い中、日本に旅行に来る中国人がなぜこんなに増えているのでしょうか。