韓国では連日のように新たなマーズ(MERS :中東呼吸器疾患)感染者が発生している。まさにマーズ禍と呼べるような状況だ。そのため私もできるだけ外出を控え、家ではじっとニュースを見ている。そんなとき、親友から1本の電話をもらった。
最近、親しい友だちでもほとんどメッセージだけでやり取りしていたが、彼女は「誰かと話がしたいのよ」と言う。そうだ、マーズが流行ってから家族以外とは話をあまりしたことがない。
もちろん、仕事の電話には出るが、このところ会議がキャンセルになったという知らせばかりだ。
彼女は「これからいったいどうなるのかしら。それにどうすればいいのかしら。下手に会合の話でも持ち出せば皆から嫌われそうだよね」と言う。そう。今はできるだけ他人と接触したくないのである。
感染を広げたお見舞い文化
これほどまでに感染が広まったのは、病院や政府の初期対応が悪かったせいだとニュースでは解説する。さらにもう1つ。韓国のお見舞い文化が余計に感染者を出した元凶だとも言う。
韓国では、病院へお見舞いする時は、大勢で駆けつける。とりわけ教会に通っている人たちは、毎週誰かの見舞いに行くことになる場合が多い。
特に、年齢の高い人ほど見舞いの回数が増える。なぜなら、高齢者同士のつき合いのため、病気にかかる確率が高いからだ。
大勢で駆けつけるばかりか、病人たちのいるところで平気でお弁当を広げたりもする。患者の介護をしている人たちへの差し入れのつもりだが、何となくピクニック気分の人たちも多い。