韓国で「オーナーリスク」への懸念が強まっている(写真はソウル市内©Can Stock Photo Inc. / [imstocks])

 会社の資金を横領してラスベガスでカジノ、不正行為を巡って兄弟間で紛争、買収した大学経営を巡る疑惑――。韓国の財閥、大企業でオーナー家を巡る事件が後を絶たない。経済失速で業績が悪化する中で相次ぐ不祥事に、韓国では「オーナーリスク」への懸念が強まっている。

 2015年5月7日未明、韓国の大手鉄鋼メーカーである東国(トングク)製鋼の張世宙(チャン・セジュ=1953年生)会長に対して、ソウル中央地裁が拘束令状の発給を認めた。同会長はすぐにソウル郊外の拘置所に入った。

 ソウル中央地検は、張世宙会長に対して200億ウォン(1円=9ウォン)以上を横領したなどとして強制捜査に乗り出していた。証拠隠滅の疑いがあるなどとして裁判所に拘束令状の発給を求めていた。

 張世宙会長はラスベガスのカジノに頻繁に出入りしていたという。韓国メディアは、ここ数年で数百万ドルを使っていたと報じている。このカジノ資金に会社のカネを使っていたとして横領、背任などで捜査を受けている。

「常習賭博罪」の前科持つ東国製鋼オーナー

 東国製鋼は、ポスコ、現代製鉄と並ぶ韓国の大手鉄鋼メーカーで、日本のJFEスチールが14%を出資している大株主だ。日本との関係も深い。

 張世宙会長の祖父が1945年に釘や針金を作る小規模工場として創業した。その後、韓国の高度経済成長に乗って急成長を続け、鉄鋼大手になった。以前は、労使協調経営として知られ、手堅い経営を続けてきた。

 創業3世である張世宙会長は、積極経営で鳴らした。ソウル中心部に高層の本社ビルを建設するなど「目立つこと」も好きだった。