本記事は3月25日付フィスコ企業調査レポート(テラ)を転載したものです。
執筆 客員アナリスト 佐藤 譲

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「バクセル」の薬事承認取得に向けた開発活動を推進

 テラ<2191>は、 東京大学医科学研究所発のバイオベンチャー。がんの最先端治療法である樹状細胞ワクチン「バクセル®」(免疫細胞療法)等、細胞医療に関する技術ノウハウの提供及び研究開発を行っている。子会社の設立等により再生医療・細胞医療における周辺領域の事業化にも積極的に取り組んでいる。

 2014年12月期の連結業績は、売上高が2013年12月期比21.2%増の1,865百万円、営業損失が293百万円(2013年12月期は23百万円の黒字)とほぼ会社計画並みの水準で着地した。樹状細胞ワクチン「バクセル®」の薬事承認取得に向けた開発活動を推進するなかで、研究開発費や広告宣伝費が増加したほか、連結子会社の事業立ち上げ負担などが、収益圧迫要因となった。

 2015年12月期も売上高は2014年12月期比19.1%増と2ケタ増収となるものの、「バクセル®」の治験開始に向けた研究開発費や、子会社の事業立ち上げ費用増により、営業損失は365百万円となる見通しだ。焦点となっている「バクセル®」の治験届は膵臓がんを適用領域として2015年内に提出され、年内にも治験を開始する見込みとなっている。業績面では治験費用が2016年度以降、本格的に計上されることになるが、現在、複数の企業とライセンス交渉を行っており、この契約時期によって収益状況も変わってくることが予想される。

 「バクセル®」は条件付(早期)承認制度活用を想定すると、治験が順調に進めば2019年にも薬事承認が下りるものと予想される。同社は 中期計画として2020年度に売上高15,000百万円を目標として掲げており、このうち半分を薬事承認された「バクセル®」で、残りを細胞医療事業や周辺事業で伸ばしていく計画だ。特に、子会社で展開するゲノム診断支援事業や少額短期保険事業の開始によって、顧客層ががん罹患者から健常人まで拡大することになり、グループ間でのシナジー効果も今後、収益成長を加速させる要因になると考えられる。

Check Point

●がん抗原の独占実施権、世界トップクラスの臨床実績を有する
●膵臓がんで薬事承認がとれれば、その他のがん種へ適用領域を拡大
●がん治療から、健常人向けのがん予防・再発予防まで拡大する

会社概要

「樹状細胞ワクチン療法」を中心に再生・細胞医療の研究開発企業

(1)事業概要

 同社はがんワクチンの1つである樹状細胞ワクチン「バクセル®」を中心に、医療機関に対する技術・運用ノウハウの提供、及び再生・細胞医療に関する研究開発を行う企業である。また、事業領域を拡大し6つの連結子会社を有している。2014年12月期より、樹状細胞ワクチン「バクセル®」の薬事承認取得に向けた開発活動を本格化したことに伴い、事業セグメントを表の通り、細胞医療事業、医薬品事業、医療支援事業の3つに区分変更した。

○細胞医療事業

 細胞医療事業とは、同社が開発する樹状細胞ワクチン「バクセル®」を中心とした独自のがん治療技術・ノウハウの提供、細胞培養施設の貸与、特許実施権の許諾及び集患支援サービスとなる。

 売上高の大半は、契約した医療機関から樹状細胞ワクチン「バクセル®」の症例数に応じて得られる技術料や設備貸与料、特許使用料などからなる。医療機関との契約形態には、「基盤提携医療機関」「提携医療機関」「連携医療機関」の3タイプがある。「基盤提携医療機関」とは、同社が細胞培養施設を当該医療機関に設置・貸与し、技術・ノウハウの提供や特許使用の許諾などを行う医療機関になる。「提携医療機関」とは、細胞培養施設を自身で既に整備している医療機関のことで、主に大学病院など大型の医療機関が対象となる。施設の貸与料がかからないため、1症例当たりの売上高は基盤提携医療機関より少なくなる。「連携医療機関」とは、細胞培養施設を持たず、基盤提携医療機関及び提携医療機関と連携して治療を行う医療機関となる。同社が当該医療機関に対してマーケティング、権利使用許諾などを行い、その対価をコンサルティング料として徴収する。樹状細胞の培養を基盤提携医療機関または提携医療機関で行うため、1症例当たりの当該医療機関から得られる売上は、培養を実施した基盤提携医療機関または提携医療機関を通じて徴収することになる。

 こうした契約医療機関の数はグラフのとおりで、2014年12月末時点で37ヶ所となっており、北海道から沖縄に至るまでほぼ全エリアにおいて契約医療機関が拡大してきている。また、症例数としては累計で約8,900症例と樹状細胞ワクチン療法では世界でトップクラスの症例実績となっている。