日経BP社が発行する雑誌「日経エレクトロニクス」(2015年4月号)に、「さらばムーアの法則」という記事が掲載された。本記事は紙の雑誌だけでなく、「日経テクノロジーonline」にも無料公開されている。
記事のリード(導入部)には、「過去50年にわたって電子産業を支えてきたムーアの法則が、終焉を迎えつつある。トランジスタを微細化して回路の集積度を高めるほどコストが下がり、性能が高まる黄金時代は既に去った。エレクトロニクス業界はムーアの法則に依存した開発手法から、創意工夫をこらして価値を生み出すスタイルへの転換を迫られている」と記載されている。
リード後半の「創意工夫をこらして価値を生み出すスタイルへの転換」について異論はない。というより、今さら強調して言うほどのことではない。というのは、2007年頃から米テキサス・インスツルメントをはじめとして、最先端の微細化を放棄する半導体メーカーが次々と現れたからだ。
特に日本においては、NANDフラッシュメモリで韓国勢とつばぜり合いをしている東芝を除いて、ほぼすべての半導体メーカーが最先端の微細化から脱落した。だから、「創意工夫をこらして価値を生み出すスタイルへの転換」は5年以上も前から起きていたことであり、何を今さら、という気がする。とはいっても、その「・・・転換」はまるでうまくいっておらず、日本半導体産業は衰退の一途をたどっており、問題を再認識するためというならば、この記述もやむを得ないかもしれない。
しかし、リード前半の「ムーアの法則が、終焉を迎えつつある」という記載には納得できない。依然として微細化は止まっておらず、したがってムーアの法則は終焉を迎えてなどいないからだ。