本記事は3月9日付フィスコ企業調査レポート(三機工業)を転載したものです。
執筆 客員アナリスト 寺島 昇

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建築設備の企画・設計・施工・保守で国内トップクラス、戦前からの高い技術力と信用力が強み

 三機工業<1961>の主要事業は、オフィスビル、学校、病院、ショッピングセンター等の大型施設、工場、研究施設などの建築設備の企画・設計・施工・補修・保守等である。同社の強みの1つは戦前から培われた高い技術力であり、信用力である。

 2015年3月期の第3四半期の業績は、売上高122,653百万円(前年同期比13.3%増)、売上総利益9,678百万円(同4.2%増)、営業損益は1,504百万円の損失(前年同期は1,986百万円の損失)、経常損益は713百万円の損失(前年同期は1,552百万円の損失)、四半期純損益は207百万円の損失(前年同期は924百万円の損失)となった。一部不採算工事の発生により工事損失引当金を積み増したことなどから上半期(第2四半期累計)の損益は前年同期を下回っていたが、第3四半期業績は好調に推移、第3四半期累計では前年同期を上回る決算となった。なお、同社の業績は、工事の完成引渡しが年度末に集中する影響で、売上高・利益額が第4四半期に偏る季節要因がある。

 2015年3月期の業績は、売上高180,000百万円(前年比5.0%増)、営業利益3,200百万円(同13.6%増)、経常利益3,500百万円(同11.3%増)、当期純利益2,200百万円(同24.8%増)が予想されている。期中受注・完工の案件を取ることで上期の遅れを取戻し、通期では期初予想を達成するよう取組んでいるが、既に第3四半期で前年同期を上回るペースになってきたことから、この予想達成の可能性は高そうだ。

 同社は2016年3月期を最終年度とする中期経営計画「SANKI VITAL PLAN 90th」に取組んでいる。数値目標として売上高200,000百万円、経常利益10,000百万円を掲げているが、現時点で数値目標達成は容易でなさそうだ。しかし中期経営計画の目的は、単に数値目標の達成だけではない。同社は定量的な目標以外にも多くの定性目標を掲げており、その目標に向けた施策を実施してきている点では着実に変化を遂げていると言えそうだ。また、安定配当や自社株買いなど積極的な株主還元を実施し、2015年3月期の期末配当は普通配当7.50円に創立90周年記念配当5円を加えた12.50円を実施予定していることも注目に値する。

Check Point

●今期は増収増益予想、受注環境は悪くない
●2016年3月期の目標は売上高200,000百万円、経常利益10,000百万円
●安定配当に加え記念配当による増配へ、自社株買いには積極的

会社概要

旧三井物産の機械部が母体、日本経済の成長とともに同社も拡大

(1)会社沿革

 同社は1925年に旧三井物産<8031>の機械部を母体として設立された建築設備工事会社である。最初の大型工事である東洋レーヨン(現在の東レ<3402>)の滋賀工場と青森製氷の冷蔵倉庫から始まり、当初は暖房、衛生、鉄骨工事や建材などを扱っていた。その後、電気工事にも進出し、建築設備の一貫した企画・設計・施工を主たる業務として事業展開している。

 戦後は朝鮮戦争特需によって業績を伸ばし、1958年には資本金が1,000百万円を超えた。その後は東京オリンピック関連のプロジェクトにも参画、日本経済の成長とともに同社も業績を伸ばした。事業分野も空調、衛生、電気などの建築設備事業から、搬送機器、搬送システム、水処理、廃棄物処理等へ拡大し、現在では国内トップクラスの建築設備会社となっている。社歴からも明らかなように、三井グループの一員でもある。この間、株式については1950年に東京証券取引所に上場されている。

他社にはない幅広い事業領域

(2)事業内容

 同社の主要事業は、建築設備、機械システム、環境システム、不動産の4つのセグメントに分けられている。以下は各事業部門の概要である。