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 混沌としたイメージの先行する中国市場では、果たして古典的な経営戦略は通用するのでしょうか?

 4つ目のケーススタディーである、廉価版ホテルPodInnの中に、まさにその答えがあります。

 成熟しつつあるホテル業界にあって、「後発」から「徹底した顧客視点のポジショニング」によって急成長を遂げた同社。その成長の秘訣を見てみましょう。

後発ホテルチェーンはどこに成長のカギを見出したか

 ご存知の通り、中国市場ではIMC(Internet Mobile Contents)やエンターテイメント関連といった新規産業を中心に、多くの市場が創成期・勃興期を迎えています。そして読者の皆さんの中でも、「中国の成長企業」というと、どこか「勢いに乗って成功した企業」というイメージが強く存在するのではないでしょうか?

 確かに、これまでご紹介してきたEC(21cake)、ソーシャルマーケティング(Social Touch)、モバイルゲーム(iDreamSky)のように、創業者やビジネスモデルにユニークな特徴を有しつつも、大前提として、その「マクロの波」を掴んで成功した企業が多いのも事実です。

 そこで、4社目となる今回のケースでは、逆に、「成長期〜成熟期」にある伝統的な業界において、明確な「ポジショニング」により、「後発」から一気に大躍進を遂げているような成長企業の例として、廉価版ホテルのPodInn(布丁酒店)をご紹介したいと思います。

 廉価版ホテル業界は、既に「エコノミーホテル」のセグメントが確立しており、トップ4社はいずれも上場を遂げている状況です。

 そうした中、PodInnはさらに1つ下の価格帯である「バジェットホテル」に商機を見出しました。そして、次に3つの戦略によって、で2009年の1号店開店から5年間で会員数1400万人、50都市326店舗にまで急成長を達成。足元では北米進出まで着手し始めています。

・顧客視点に基づいた、思い切った取捨選択による「ポジショニング」
・杭州(浙江省)を中心とする「地域ドミナント戦略」
・業界で先駆的な「オンラインマーケティング」

 本ケーススタディでは、廉価版ホテルという比較的、伝統的な産業をテーマにしながら、

・(先進国では当然の)古典的戦略が中国でも通用し得る
・(一方で、先進国以上に)オンラインを中心とする新規産業との融合が必須

 という両方の視点から、分析を加えたいと思います。