成熟していく伝統的な業界に、風穴を

DI 板谷:4社目となる今回のケーススタディは、廉価版ホテルのPodInn(布丁酒店)です。これまで、EC・ソーシャルマーケティング・モバイルゲームと、比較的新しい産業が続きましたので、初の伝統的な産業ということになります。
LC 朴:過去3回のケーススタディでは、大まかに言うと、「マクロな市場機会の波」をいち早く捉え、そこに「ユニークなビジネスモデル」や「優秀で最適な経営陣・チーム」をぶつけることで成功につながった話が多かったと思います。
一方で、今回のPodInn(布丁酒店)の立脚するホテル業界は、それら勃興期にあった業界よりは、より成熟したフェーズにあります。
DI 板谷:簡単に中国国内旅行市場を見てみますと、2008年→2013年の5年間で、旅行者は17億人から33億人に倍増(今後も10%成長)、消費金額は14兆円から42兆円に3倍増(今後も10〜20%成長)と、業界全体としては、まだまだ力強い成長基調にあることが分かります。
ただ、競合環境はそれ以上に激しくなってきているようですね。

LC 朴:はい、「人口:大」×「旅行市場:増」で、宿泊市場も必ず恩恵を受けるだろうと思っていました。
しかし、いわゆる「エコノミーホテル」のセグメントでは、初回投資を検討していた2009年時点で、大手4社全てが既に上場を果たすほどに成長を遂げていたのです。
当時のデータを振り返ると、1位(616店舗)のHomeInn(如家)、3位(236店舗)のHanting(汉庭)がNASDAQ上場、2位(337店舗)の7daysがNYSE上場、4位の锦江が上海上場となっており、これら上位4社が業界トップランナーとして、大きな存在感を持ち始めていました。
DI 板谷:普通に考えると、ようやく数店舗を出したばかりの後発のチェーンが上場を狙っていくのは、なかなか厳しいものがありそうです。
LC 朴:そのような中、「エコノミーホテル」の1つ下の価格帯である「バジェットホテル」に注目したのが、米国系廉価版ホテル(速8)の中国総経理の経歴も持つ、PodInnのCEOです。
「バジェットホテル」は、日本では聞き慣れない方もいらっしゃるかもしれませんが、元々、フランス最大のホテルチェーンであるアコーア(ACCOR)の5分類に基づくものです。
アコーア自身を例にとると、最高級ランクから順に「LUXUXY:SOFITEL」「UPSCALE:Pullman」「MIDSCALE/ECONOMY:約10ブランド」「BUDGET(最下層):欧州200店舗を保有するFormula1等の5ブランド」というブランド展開になっています。