米国オバマ政権のウェンディ・シャーマン国務次官が自らのアジア歴訪について演説し、その内容が日本の主要メディアでも報道された。

 同次官は演説のなかで、歴史問題や領土問題について日本、中国、韓国に対して均等に助言を与えるような発言をした。だが、全体としては中国を重視し、日本は後回しという姿勢をにじませた。日米同盟に基づいて日本の防衛を誓約することよりも中国との関わりを強調するという、オバマ政権の従来の路線を反映しているとも言えそうだ。

 シャーマン次官はこのほど北東アジアを、中国、韓国、日本という順番で歴訪した。そして、ワシントンに戻った直後の2月27日、カーネギー国際平和財団でアジア歴訪の総括について演説した。

 日本の主要メディアは、主にこの演説の歴史問題に関する部分だけを取り上げて報道したが、演説全体の構成や表現という観点から検証すると、オバマ政権の対アジア政策の傾向が浮かび上がる。今回のシャーマン演説のポイントを具体的に見ていこう。

最後にされた日本訪問

 第1は、シャーマン次官がアジア3国を語る順番である。

 同次官は、中国、韓国、日本という順に訪問した。だから演説でも中国、韓国、日本という順に話を進めた。だが、この歴訪の順番自体が、従来の米国の政府高官や連邦議員の北東アジア訪問の慣例とは異なる。

 共和党のブッシュ前政権では、政府高官が歴訪する順番は、同盟国を重視する大前提からまず日本だった。そして韓国、その後に他の友好国あるいは同盟国、さらに中国を訪問対象に含めるならば、ほとんどの場合「最後に中国」という順番だった。その順番が変わることはほとんどなかった。