クリント・イーストウッド監督の最新作『アメリカン・スナイパー』(2014)が劇場公開されている。
イラク戦争で160人を射殺したスナイパー
日本で米国を超える評価を受け、キネマ旬報ベスト・テン第1位ともなった音楽映画『ジャージー・ボーイズ』(2014)に続きイーストウッドが描くのは、海軍特殊部隊ネイビー・シールズの「伝説的」スナイパー(狙撃手)クリス・カイルの半生。
父からライフルを教えられ、ロデオに長けていたテキサスの青年が、テロ報道に接し入隊を決意、シールズの厳しい訓練場面へと映画は進む。
米軍で最も過酷とされ、脱落者も多いという訓練ぶりは、1年前公開された『ローン・サバイバー』(2013)冒頭でも見られたものだ。
そこでは、2005年、アフガニスタンでのタリバン幹部殺害計画「レッド・ウィング作戦」が失敗に終わり、ただ1人生還というシールズ創設以来最悪と言われる惨事が描かれているが、今回は、イラク戦争で160人射殺したというスナイパーの物語である。
そんなイーストウッド映画の汚い言葉連発の訓練風景を見て思い出すのが『ハートブレイク・リッジ/勝利の戦場』(1986)。悪ガキ揃いの海兵隊員を鍛える定年間近の軍曹をイーストウッド自身が演じ監督した作品である。
映画の題名が意味するのは、主人公がかつて戦った朝鮮戦争の激戦「Battle of Heartbreak Ridge」。