「The Erasmus Impact Study(2014年9月)」によると、海外経験が豊かな学生は、そうでない学生に比べ、長期の失業に陥る割合が半分であり、さらに卒業後5年間における失業率も23%低いことが明らかになりました。

スペイン、景気後退から脱却 中銀

スペインで行われた緊縮政策と記録的な失業率に抗議するデモ ©AFP/DANI POZO〔AFPBB News

 当調査はエラスムス(ERASMUS, European Region Action Scheme for the Mobility of University Students)プログラムというEUの交換留学制度の評価と改善を図るために行われたもので、回答者は学生や卒業生、大学職員から高等教育機関、雇用主などに至る8万件のサンプルに基づいています。

 海外体験は若者のキャリア形成に寄与することが定量的に証明されたということで、関係者の間で注目されている報告書です。特に若者の失業率が高止まりしているEUにおいては、非常に貴重なデータであり、示唆に富むものと思われます。

 またエラスムスプログラム参加者の85%が、自身のエンプロイアビリティー(雇用に値する能力)を高めるために当プログラムに応募しているという実態も明らかになりました。

エラスムスプログラムとは

 エラスムスプログラムは、1980年後半からはじまり、EU域内で学生のボーダレスな交流の機会を提供することを目的とし、1シーズンに4000人ほどの行き来をサポートしています。

 さらには、学生のみならず教員の交流も促したり、EUの高等教育機関の多国間協力で質の向上を図ったり、企業との連携を促進したりと多岐にわたる取組がなされています。

 代表的なプログラムは、以下のような留学、海外インターンシップ、海外ボランティアで、渡航期間は3~12か月ほどです。

●留学

 37か国の多岐にわたる大学で交換留学制度が提供されています。さらには奨学金制度も用意され経済面で恵まれない学生にも広く門戸を開いています。

●海外インターンシップ

 一般的なプログラムは、8~10週間のフルタイムワークで、実社会に直結したプロジェクトへの参加や職業体験などがメインです。日々周囲からのフィードバックをもらえることも特徴です。そのまま雇用につながるケースもあるため、将来の明確なキャリアに基づき参加プログラムを決める学生も多いです。

 対象分野は、会計、考古学、建築、地域開発、コンサルティング、経済、環境、エンジニアリング、金融、グラフィックデザイン、人材開発、IT、国際関係、ジャーナリズム、法律、マーケティング、科学、ソーシャルワーク、教育、観光・ホスピタリティ等々、さまざまです。