ベトナムでは、日本以外にも、ロシア、韓国、フランス、インド等の諸外国との間で原子力発電開発協力を推進しているが、福島原発事故の諸問題に対する検証がなされぬ時期に、さらには日本国内の原発「安全神話」の検証がなされぬまま、日本からベトナムへの「原発輸出」が決定されたことになる。
具体的には、中南部ニントゥアン(Ninh Thuan)省を中心に2030年までに14基の原子力発電所の稼働を目指している。
日本は、第2原発(2基)の建設を受注している。ちなみにロシアとの協定で2014年に着工、2020年までに稼働予定であった第1原発(2基)は、技術面や財政上の理由で着工が延期されている。
電力需要が急増するベトナムのエネルギー事情
ベトナムでは、順調な経済成長、都市化、人口増などで電力需要量の急激な増加が予測されており、その供給をいかに実現するかが現実的な課題となっている。
新たなダム建設を必要とする水力発電所増設の困難さ、世界市場での化石燃料価格の上昇の可能性や価格の不安定性等から、その代替エネルギー源として、太陽光、太陽熱、風力、バイオマス等の再生可能エネルギーよりも、外国との開発協力を基本とする原子力発電に重点を移そうとしているとみられる。
ベトナム科学技術省の「原子力開発計画」によると、2011年時点での電力需要予測量およびそのエネルギー源比率予測は、下の表1のとおりである。
電力需要量については、2010年から2020年までに約3倍、2030年までには約6.5倍に増加すると予測されているとともに、エネルギー源を現在の水力・火力(石油・天然ガス)発電から、国内の石炭炭鉱の開発を進める計画である一方で、原子力発電の比率を高めることが前提となっている。
この予測は、GDP平均成長率を、2011年-2015年を7.5%、2016年-2020年を8.0%、2021-2030年を7.8%とし、人口を2010年の8800万人をベースに、2015年に9100万人、2020年に9600万人、2030年に1億200万人とした数値であり、今後見直される可能性はある。
