日本では、2011年3月11日に発生した東日本大震災以降、国内の原発政策の見直しが行なわれ、2013年9月以降は「原発ゼロ」の状況が続いている。

 新たな原子力発電所の建設については困難な社会状況にあると思われるが、2015年2月には鹿児島県の川内原子力発電所の再稼働が現実味を帯びており、その動向が国内の原発問題やエネルギー政策に対する議論を再燃させる可能性が予測されよう。

ベトナムにおける原発推進の隠れた理由とは

 ここでは、日本ではあまり注目されているとはいえない「原発輸出」問題について、ベトナムの状況を例に考えてみたい。

 「原発輸出」とは、(1)原子力発電の技術および施設・部品を海外に売却すること、(2)海外における原子力発電所の建設事業に企業が参入すること、(3)海外における原子力発電の導入に企業・政府が技術提供することなどをいう。

 さらに、プラントそのものの供給だけでなく、金融支援、核燃料の調達、原子力発電所の運転・保守、安全規制の構築、人材の派遣、人材の育成、使用済み核燃料や放射性廃棄物の保管・処分までをパッケージ化して提供する「パッケージ型インフラ海外展開」の典型でもある。

 福島第一原子力発電所事故の検証が必ずしも進展していなかった2011年12月9日に日本の国会は、「日本・ベトナム原子力協定」を承認し、同協定は2012年1月21日に発効した。両国間の原子力の平和利用に関する協力、換言すれば、日本からベトナムへの原子力関連品目や原子力関連技術の移転、すなわち「原発輸出」を行うことが可能となっている。

 ベトナムでは、経済成長にともなうエネルギー問題で、これまでの火力発電や水力発電を中核とした電力供給から、2020年までに原子力発電を導入することを検討している。

 原子力発電推進政策の法的基盤となるものとして、2008年6月、原子力法が成立し、2009年1月に施行された。2011年7月には首相決定として、「2030年までの国家電力計画:2010年~2020年の国家電力開発計画」(第7次マスタープラン)が公布され、複合的なエネルギー政策が推進されることになった。

 また、原発推進の隠れた理由として、南シナ海の領有権問題の不透明性が挙げられよう。中国の実効支配が進む中で、エネルギー安全保障として、石油・天然ガスの採掘権が保障される可能性が不確実であるからである。