ブッシュ前大統領がエボラウイルス2次感染の舞台となった病院を慰問
テキサス州ダラスでエボラウイルスに暴露した可能性のある市民に対する地元保健当局の経過観察が11月7日、ついに終了した。9月30日から始まった一連のエボラウイルス感染の連鎖が終息したのである。同日、ブッシュ前大統領はエボラウイルス2次感染の舞台となった病院を慰問し、病院スタッフと共に「エボラからの開放」を祝った。実は昨年、ブッシュ前大統領は同病院で心臓手術を受けている。ダラス市民の間で安堵感が広がる一方で、流行地である西アフリカ諸国では感染の拡大に歯止めがかかっておらず、ダラス地域の病院は、引き続き新たな感染者の出現に警戒を強めている。外来診察や入院の際、西アフリカ諸国への渡航歴を尋ねられるのは必須となっている。
行動制限と地域社会・経済とのバランス
今回、ダラスでのエボラウイルス感染では、リベリアから渡米した初感染者1名が死亡、その治療に当たった看護師2名が2次感染した。2次感染した看護師が旅客機でアメリカ西部へ旅行していたことが明らかになるなど、当初、エボラウイルスに暴露した可能性のある市民や病院スタッフの行動が把握されていないことが問題となった。これ以降、地元保健当局はエボラウイルスに暴露した可能性のある市民や病院スタッフに対し、旅行や公共交通機関の利用を含めた外出を自粛するよう要請した。この要請は基本的に市民や病院スタッフの良心に働きかけるものであるが、微妙なバランスの上に成り立っている。つまり、裁判所命令に基づく警察官による行動制限など強制力の強い手段で隔離を行おうとすれば、周辺住民は過度の恐怖を抱き、地域社会が混乱し地域経済が成立しなくなる可能性がある。テキサス州では、労働組合加入率が低く法人税がないことを背景に、ダラス・フォートワース地域を含め、大企業の本社移転が相次ぎ、人口は堅調に増加している。今年は、米国トヨタの本社もカルフォルニア州ロサンゼルス近郊からダラス近郊へ移転することが決まった。このような地域の経済成長への影響を最小限したい一方で、さらなる2次・3次感染が引き起っては元も子もない。
今回は、「感染者の血液・体液 (分泌物、吐物・排泄物) が傷口や粘膜に接触することによってエボラウイルスに感染する」と言う事実に基づき、市民や病院スタッフに対し個別にエボラウイルス感染のリスクを評価し外出自粛を要請したことが奏功したのだろう。2次感染者が診断された直後、ダラス市長自ら、2次感染者が居住する地区に赴き、住民一人ひとりに冷静な対応を説明していた姿は印象的であった。温厚なテキサス人という地域性も影響しているかもしれない。