市場経済化、民主化の道を順調に歩んでいるように見えるモンゴルは再び、米国や日本との距離を取ろうとしているのだろうか?
9月11日、中央アジアにあるタジキスタンの首都ドゥシャンベで行われた上海協力機構の第14回会合で、モンゴルはロシア、中国と3カ国首脳会談を行った。今のところモンゴルは、上海協力機構にオブザーバー参加している状況だが、近く正式参加の申請をするのではないかとの情報が飛び交っている。
ロシアと中国の首脳が相次いでモンゴル訪問
直前の9月5日には、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領がモンゴルを訪れ、ハルハ河戦争(ノモンハン事件)勝利75周年をともに祝った。
さらにその2週間前の2014年8月21~22日の中国、習近平国家主席によるモンゴル訪問があり、医療、教育、鉄道などの分野での大規模な融資や援助が決まった。
2か月近く経った今でも、中国の新聞各紙の日本語インターネット版では、その成果が大体的に掲げられている。
1990年に民主化し、ソ連の影響力を脱したモンゴルにとって、圧倒的な人口と経済力を持つ隣国中国に経済的、政治的に完全に取り込まれないことが外交の最重要案件となっていた。
そのため、ロシア、中国以外の国々と広く外交関係を展開する「第三の隣国」政策を打ち出し、広く世界の多くの国々に門戸を開いていこうとしていた。
しかし、中露首脳の相次ぐモンゴル訪問など、最近の政治的な動向から考えれば、大胆に政策を転換したのではないかとも受け取れる。
年々存在感を増し、1対1ではものが言えなくなってきている状況の対中国外交を、ロシアを今まで以上に巻き込んだ三国間の協議あるいは上海協力機構という国際組織という舞台を通じた形に持って行きたいと考えているのではないかと思える。
5年前の記事で、「当時のモンゴル首相がロシアからの協力・援助を積極的に引き出し、中国との社会経済的なバランスをとろうとている」と書いたが、そのような関係だけではもはやバランスを保てないぐらいに中国への依存度が強まってきていると考えられる。
この5年間、モンゴルは何もしていないわけではない。特に地下資源の開発では、できるだけ多くの外国を参加させることで、(特に対中国であるが)安全保障的にも満足のいく体制を構築しようとした。
中国がレア・アースの輸出を制限しようとしたとき、積極的に日本などにアプローチをかけてきたのも同様の発想である。