S&P500種指数はついに2000を突破しました。そして現在はそのレベルからいくぶん下がった状態にあります(これが一時的であることを祈ります)。アリババのIPOは無事に成功し、公募価格の38%高で初日の取引を終えました。市場はまだ強気ムードですが、この史上最大の IPO により他の銘柄へ向かうはずだった資金が吸い上げられたのではないかという懸念も顔を見せています。

 FRBのジャネット・イエレン議長は、この数年続いた債券買い入れプログラムが今月で終了したとしても、「当面は」緩和的な金融政策を継続すると表明しています。つまり、短期金利の最初の引き上げはもっと先になるということです。第1四半期は振るわなかったものの第2四半期の米国経済は4%以上で成長しており、今年下半期の実質成長率は3%に届くかもしれません。スコットランドでは住民投票にて、今後も英国の一部であり続けることが決まりました。投資家の見通しもこうした好ましい状況を反映したものとなっており、大半の調査結果で楽観的な見方が示されています。

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 しかしこうした背景がある一方で、楽観的ムードを一変させかねない悩ましい状況も数々あります。それでも今年の残りは経済も市場も良い状態で終わるだろうと私は考えていますが、大半の観測筋と同じく心配していることもあります。

 まずは株価収益率です。S&P500種は現在、2014年の収益の17倍、来年度予測のおそらく16倍で取引されています。これは過去12カ月の収益をベースに計算しています。「バブル」が起こるのは25倍から30倍であるため、この計算方法だと現在のレベルはバブル発生からはまだ遠い状態にあるということになります。

 市場がバブル状態に近づきつつあると考える向きは、イェール大学のロバート・シラー教授が考案した、いわゆるCAPEレシオを用いているのかもしれません。この方法で市場を評価すると、現在の株価収益率は26倍となり、このシリーズの歴史を基準にすると、現在の市場は買われ過ぎの域にあることになります。CAPE方式は1980年代、1990年代初め、そして2008年から2009年の金融危機まではうまく機能していました。しかしこの5年間は、同レシオが警告値にあるにもかかわらず、市場は上昇を続けています。