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ソブリンリスクによって高まった「不確実性」は沈静化し、「ファンダメンタルズ」に注目が集まり始めている〔AFPBB News〕

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 年前半に欧州ソブリン危機という未知の状況に遭遇して高まった不確実性は、欧州連合(EU)と国際通貨基金(IMF)による各種の対策や、各国当局が連携して行ったストレステストによって、ようやく沈静化してきた。

 一方で、6月頃から米国の減速懸念や欧州の停滞長期化という経済ファンダメンタルズに市場の焦点が当たり始め、7月23日の欧州ストレステストの結果公表前後からは、市場のテーマが「不確実性」から「ファンダメンタルズ」に明確に転換した。

 「不確実性」の高まりは、投資家のリスク許容度低下を通して、先進国・新興国を問わず、株式などのリスク資産の価格を軒並み押し下げる方向に作用する。新興国通貨も同じく影響を受ける。

 「ファンダメンタルズ」は、各国の株式市場に選別的に作用する。各国の景気や為替変動が企業収益に与える影響を評価しながら、株価形成がなされる展開となりやすいためだ。年前半は「不確実」に覆い隠されていた新興国市場の高い成長率や健全な財政といった「ファンダメンタルズ」の強さが、年後半は、株式市場という鏡により映し出されやすい環境となっていくことが期待できる。

新興国市場の2つのリスク

 ただ、今後新興国市場への期待が高まる中、留意しておくべき2つのリスクに言及しておこう。

 1点目は、新興国市場への過度な資金流入だ。新興国市場や資源市場に過度の資本が流入すると、景気過熱やインフレ懸念の高まりを招くことになり、好ましからぬ経済の振幅につながるリスクがある。

 実は、欧州ソブリン問題が深刻化したことは、新興国の景気過熱やインフレ懸念を適度に抑制するプラスの効果ももたらした。IMFが7月に公表した金融安定化報告・市場アップデートでも「2009年3月から2010年4月の1年にわたって新興国市場へのポートフォリオ投資の大幅な流入拡大が続いたが、この傾向は一部反転し、資産価格も低下した」と指摘している。

小麦相場が2年ぶり急騰、ロシア穀物禁輸で

干ばつに加えて、ロシアの輸出禁止措置により、小麦相場が急騰している(シカゴの商品先物取引所)〔AFPBB News

 ところが、ソブリン問題が一段落してみれば、米国ミューチュアルファンドへの資金流出入状況は、新興国の債券、株式ファンドへの流入が目立ってきており、7月最終週には2009年10月以来となる流入額を記録した。年後半に向けて、さらに流入が加速する可能性があり注意が必要だ。

 2点目は、インフレ。アジアや東欧など、資源を持たない多くの新興国経済にとって、インフレ率の上昇は経済成長の脅威となる。インフレが昂進すれば、大幅な金融引き締めが必要となり、景気をオーバーキルしてしまう可能性が高まる。その意味で気をつけておかねばならないのは、食料品価格の上昇だ。

 記録的猛暑と少雨による干ばつ被害で穀物価格が上昇している。それに加えて、ロシアが小麦などの一時輸出禁止措置を発表したことで、価格上昇に拍車がかかった。主要国には一定の備蓄があり、現時点では、危機的状況を想定する必要性は低いが、穀物価格の高止まりは他の食料品にも波及し、新興国のインフレ懸念の拡大につながりかねない。