我々ロシア執筆者グループメンバーの大坪祐介氏が8月25日に食品の輸入禁止問題を取り上げていた(「ロシア経済制裁で漁夫の利を狙う国々、日本も好機」)が、モスクワから最新の状況をお伝えしたい。

モスクワのマクドナルド4店舗が営業停止

日曜日午前中のマクドナルド。普段なら混み始めていいのだが・・・

 大坪氏の記述の通り、8月7日、ロシア政府は、自国に経済制裁を科している西側諸国からの食品輸入の禁止を宣言した。ロシアの市民生活ではそれ以外にも異変がいろいろと発生している。

 その1つがロシア消費財監督局によるモスクワ市内のマクドナルド4店舗の営業停止命令だ。

 1990年1月にモスクワ・プーシキン広場に1号店が開店以来、100を超える都市に440店舗ものチェーンを展開したマクドナルド・ロシアは、間違いなく西側レストランチェーン最大の成功者である。

昼頃なると、どんどん客は来店。1人の男性に、「営業禁止の店があるらしいが気にならないか」と聞くと大笑いされた

 マクドナルドがロシアに紹介したものは、ハンバーガーを中心とするそのメニューだけではない。ファストフードレストランの運営方式そのものを、あの独特のフロアプランの店舗デザインとともに新生ロシアに持ち込んだ意味は、どんなに賞賛してもし切れるものではない。 

 手許に面白いアンケート結果がある。8月22日号の「METRO」紙がSNSサイト「V Kontakte」(ロシアのFaceBook)を使用して調査した「もしマクドナルドが全店閉鎖というような事態が発生したら、あなたにとって何が一番困りますか?」という質問である。

いつもは客でいっぱいのフロアには、大勢のスタッフが目立つ。中にはモップを持って客の足跡を必死で拭き取る係も。これを見ると、何が違反に問われたかすぐ分かる。マックの20年にわたるロシア社会への貢献を考えると小さな話である

 47.8%の回答が「無料トイレがなくなること」と答えている。

 ロシアにおけるトイレ問題は、我々在留邦人にも深刻な問題で、特に車で地方出張などに出かけたときに利用させてもらうマクドナルドの店内にある清潔なトイレは実にありがたいものだ。この数字を見ると、ロシア人も同様の問題を抱えているようだ。

 ロシアのトイレは、数が少ないというだけではない。使用者の使い方が荒く、トイレ内部が非常に汚れる。ロシアの人にはトイレをきれいに使う、という感覚がないうえ、それを掃除する人がいない。

 ソ連時代からトイレットペーパーを便器に捨ててはいけない、というルールがあるため、便器の横には必ず籠が用意されている。ただ、その籠からあふれ出る紙がそこら中に散逸し、実に不衛生な状態となる。