ベルリンやアムステルダムの劇場公演を通じて学問芸術の公共性を考えるはずの今回、残念ながら(地味な)(私としては本業の)本筋の話題に戻れない残念な展開がありました。

 7月17日、早稲田大学の設置した「大学院先進理工学研究科における博士学位論文に関する調査委員会」(委員長・小林英明弁護士)が記者会見を行いました。

 そこで「『小保方晴子名義博士論文』は『不正はあった』が『学位取り消しには該当せず』という、日本の国内法慣習でのみ通用し、大学に導入すると明らかにおかしな結論が出る「論理未満」をもって、小保方晴子名義の「本来、正しく審査が行われていれば決して博士の学位は発給されていなかった」レベルの不正博士論文によって授与されてしまった「早稲田大学の博士の学位」を、剥奪に該当せず、とする結論を公にしました。

小保方氏、STAP細胞論文撤回に同意

小保方論文について謝罪する理化学研究所の幹部〔AFPBB News

 これは、1つの大学が、いまや自殺を挙行せんとする、寸前の遺書のような内容になっています。本当に自殺するかどうかは、早稲田の学長以下大学当局(同大学の呼称では「総長」)の判断と行動に懸かっています。

 もし、今回の「報告書」通り、この、内容的には「博士論文未満」で、行為としては「不正」が多数指摘される「論文」で授与されてしまった「学位」を「お咎めなし」として放置すれば、その時点で早稲田大学は今後、二流以下の私大のレベルに確実・急速に零落していくと思われます。

 と言うのは、この「学位問題」に大学人や研究者はアレルギー的に反応していますが、世間一般はほとんんど蛙の面に小便といった無反応、つまりノーリテラシーの現状を示しています。

 まずこれから早稲田が壊れていく危険性の高いリスクを、「報告書」の文面を子細に確認しつつ検討してみようと思います。

早稲田はこのようにして、いま自殺しようとしている

 いま、日本社会で「博士の学位」や「学術的な国際信用」がどういうものか、分かっている層(国民の10%はいないかもしれません)の親は、今後、息子や娘が早稲田大学に進学したい、と言い出したとき、専門性の高い内容であれば「やめておきなさい」と言うようになるでしょう。

 もし今回の判断が本当に大学の決定になってしまうならば。

 私もそう思うし、昨日から今日にかけて話した、こうした関連で事情の分かるすべての友人知己が、これについては同意してくれました。

 なぜか?

 その答えは「7.17報告書」にあります。ポイントが分かりやすいように、以下本稿では「早稲田大学自殺遺書」と記して、これを検討してみます。