今年1~3月、メキシコで生産された日本車が米国へ輸出された台数が、日本からの輸出を2万台ほど上回った。史上初のことだ。

 メキシコは諸外国と自由貿易協定(FTA)を結んでおり、さらに米国とカナダとは北米自由貿易協定(NAFTA)があるおかげで、メキシコは世界45カ国と貿易取引が容易になる基盤がある。

100万台の生産体制を視野に入れる日産

 それゆえに、日本から輸出する場合には乗用車で2.5%、ピックアップトラックでは25%の関税がかかる日本からよりも輸出しやすい環境にある。メキシコにとっても、貴重な外貨を稼いでくれるために、日本車メーカーの誘致に積極的だった。

 今やメキシコは年間290万台の車を生産するまでの自動車生産大国になっており、その8割が輸出されている。この生産台数は世界で8位、輸出台数では世界で第4位だ。

 メキシコにおける生産台数で米ゼネラル・モーターズ(GM)とトップ争いをしている日産自動車は、年間85万台の生産体制が出来上がっている。

 メキシコの経済紙、エル・エコノミストは「日本の車体メーカーがメキシコに日本文化の火をつけた」と見出しを打ち、日本の自動車メーカーの勢いの凄さを報じている。

日本車で溢れるグアナフアト州とアグアスカリエンテス州

 グアナフアト州はメキシコシティーからおよそ260キロ北西に進んだところにある連邦州の1つである。この州にホンダとマツダが進出している。

 ホンダは今年2月に2つ目の工場をグアナフアト州のセラヤ市に完成させた。それからわずか1週間後には、セラヤ市の隣のサラマンカ市でマツダがメキシコ初の工場をオープンさせた。

 メキシコのエンリケ・ペーニャ・ニエト大統領は、ホンダのオープニングセレモニーに参加した後、1週間して今度はマツダのそれに参加するという熱の入れようだった。メキシコ政府の日本車メーカーに寄せる期待の大きさがよく分かる。

 自動車産業は産業の裾野が広いため、外国からの投資が増え、さらにに雇用問題の解決につながっていく。メキシコ政府にとって非常に魅力的なわけだ。実際、日本車メーカーの進出によって、現在までに40億ドルの投資と2万5000人の雇用が生み出されている。

 ホンダが進出したセラヤ市に入る幹線道路沿いには「セラヤ市を選んでくれてありがとう。ホンダの皆さんようこそ」という看板が立っている。

 隣のアグアスカリエンテス州には日産の2つの工場がある。日産のメキシコ進出は古く、1966年がそのスタートだ。現在3つの工場を持ち、近い将来年間100万台の生産体制を目標にしている。