ここ最近、中越間の南シナ海問題に関する記事ばかり書いていたので、「ジャーナリストのお仕事というのは、なかなか大変ですね」という素朴な同情をJBpressの何人かの読者の方から頂戴した。

 ありがとうございます。でも、ちょっと違います。私の本業は、DI(ドリーム・インキュベータ)ベトナムにて、現地企業向けの投資(50億円のDIアジア産業ファンドの運用)と、戦略コンサルティングという2つの仕事です。

 ベトナムでの投資の話は以前少し紹介したので、今回はベトナムでの戦略コンサルティング業務について紹介しつつ、新興国市場に参入する際のチャレンジについて触れてみたい。

魅力的なベトナム市場だがコンサルティングには苦労も

ホーチミン市の遠景(ウィキペディアより)

 戦略コンサルティングは、大企業の幹部をクライアントとして、企業の戦略づくりをお手伝いする仕事。ベトナムの場合、主に日系企業がベトナム市場に参入を考える際の戦略作りをサポートしている。

 戦略コンサルティングというと華やかな印象を一般的には持つかもしれない。ビシっとダークなスーツで決めて、クライアントの社長に格好良くプレゼンするみたいな(イメージ)。

 日本では(多少)そういう部分もあるが、ベトナムではそうはいかない。むしろ、地べたを這いずりまわって市場のデータを徹底的に拾い集めるという、泥臭い仕事が中心となる。

 ベトナムの人口は約9000万人。平均年齢は20代の後半と非常に若い。こうした巨大な内需市場を狙って、ここ数年、多数の日系企業がベトナムに展開してきている。

 日系企業にとって追い風なのは、ベトナム人の日本ブランドに対するイメージが圧倒的に良いこと。日本の商品であれば、ベトナムでは販売していない商品ですら、ベトナム人はどこからともなく情報をつかんでくる。

 例えば、弊社の日本人駐在員が日本に出張すると、ベトナム人スタッフからは、「資生堂のコラーゲンドリンクを100本」「キューピーのレトルト離乳食を50個」というように社名を指定した大人買い要求が次々に出る。

 日系企業にとって非常に魅力的なベトナム市場だが、一筋縄ではいかない。特に、これから参入を検討しようとする企業が直面する典型的な課題が2つある。

1)市場データがほとんど存在しないこと

2)信頼できる現地パートナーを見つけるのが容易ではないこと

 日本企業の参入戦略作りをサポートするにあたっては、この2つの課題への解決策を示すことが、コンサルティングに最も期待されている部分となる。