慰安婦についての河野談話を検証する有識者の新報告は、不当な非難によって日本が国際的にいかに傷つけられてきたかを改めて浮かび上がらせた。戦時の日本の官憲が組織的に女性たちを無理やりに連行するという「強制」はなかったことが裏づけられたからだ。

 だが、すでに現代の日本はその「強制」の濡れ衣によって、さんざんに誹謗されてきた。日本国民の名誉を傷つけた“惨劇”とも言えるこんな事態を引き起こした元凶は誰なのか。

 私はワシントン駐在の産経新聞記者として、いわゆる慰安婦問題の報道に長年あたってきた。特に2007年に米国連邦議会の下院が慰安婦問題での日本非難決議を採択した当時、日本のメディアの中ではおそらく最も多くを取材し、報道した記者だったと思う。その体験からすれば、今度の報告はようやく確認された「7年目の真実」だった。

露わになった河野談話の虚構部分

 いわゆる慰安婦問題の誤認の基本構図を改めて説明しよう。

 問題の核心は日本の軍、あるいは政府機関、つまり官憲が日本軍将兵の性的行動のために女性たちを強制的に連行したかどうか、である。

 1993年の河野談話にはその種の強制連行があったという意味の記述があった。その談話の責任者の河野洋平内閣官房長官(当時)は「強制連行の事実があった」と述べた。ところがそんな日本官憲による強制連行はなかったのだ。

 だが、強制連行はあったとする虚偽の主張から国際社会ではこの慰安婦たちを「日本軍による20万人の性的奴隷」と断じる日本非難が起きた。その象徴が前記の米国下院決議であり、96年の国連クマラスワミ報告だった。いずれも日本軍当局がその方針として、朝鮮半島や中国、インドネシアなどの若い女性を無理やりに連行して、売春を強制したという断定を前提としていた。そして河野談話がその歴史的事実を認めている、という主張だった。