「チャイナプラスワン」というキーワードに背中を押されるようにして、日本企業はアジアシフトの模索を始めた。だが、見えてくるのは「足踏み状態」。アジアの複数の国からは「日本企業は商売をする気があるのか?」という、いら立ちの声が聞こえてくる。ミャンマーとバングラデシュ、少なくともこの2つの国では、今のところ日本企業のイメージは決して芳しくない。

 安倍晋三政権はミャンマーへの積極的な支援と投資を打ち出している。2013年5月には安倍首相がミャンマーを公式訪問し、民生向上・貧困削減、人材育成・制度整備やインフラ整備を優先分野とし、幅広い協力関係の構築を打ち出した。鳴り物入りの支援策もあってか、現地の日本企業数も2014年4月末時点で161社にまで増えた。

 チャイナプラスワンの主戦場はミャンマーか――、そんな錯覚に陥るほど、2013年には日本にミャンマーブームが到来した。ところが、現地では必ずしも日本企業の進出は加速していない。確かに、ミャンマーは低廉で良質な労働力が豊富であることから生産拠点としても魅力的だ。だが、実際に稼働している日系の工場は50カ所にも満たないとも言われている。

 日本企業のミャンマー進出を支援するミャンマー人のビジネスマンは、「現地にあるのはほとんどが情報収集を目的とした駐在員事務所。実際にビジネスに結びついているのはごく少数で、日系工場の数はバングラデシュにはるかに及ばない」と打ち明ける。

 日本政府の後押しもあって、ミャンマーには日本から数多くの視察団が訪れた。現地のミャンマー人らは「商機到来」とばかりに胸を高鳴らせた。だが、その期待はもろくも崩れ去ったようだ。

日本企業は行動が伴わない

 このミャンマー人ビジネスマンは次のように語った。ミャンマーでは今、こんな言葉が流行しているのだという。

 「日本で『3K』という言葉があるように、ミャンマーでは『4L』という言葉があるんです。“Look、Listen、Learn、Leave”の“L”です。日本人視察団の特徴ですよ。見る、聞く、学ぶ、そして去っていくのが日本人。決して商売にはならないのです」