鷲尾 そうですね。ウンギョンさんの存在は非常に象徴的です。これまで北朝鮮が帰国させたのは、北朝鮮籍や韓国籍の人とはあまり関係のない、日本国籍を持つ拉致被害者だけでした。
今後は、横田めぐみさんのように韓国人と結婚した方、あるいは北朝鮮の人と結婚した方などにもっと調査が及べば、本格的な問題解決の糸口につながるかもしれません。
中山 拉致問題と同様に、日朝間には1970年に起きた「よど号ハイジャック事件」の犯人引き渡しという懸案も存在します。国際手配中のメンバーは事件から45年近く経つ今も北朝鮮で暮らしており、また、よど号犯の妻が拉致に関わったという情報もあります。
実行犯やその妻という「生きた証拠」を逮捕帰国させて、彼らの頭の中にある拉致被害者に関する情報を引き出すことは重要であり、この点に政府はしっかり切り込むべきです。
鷲尾 先日、拉致問題特別委員会の議員とともに佐渡市を訪問し、拉致被害者の曽我ひとみさんと意見交換を行いました。
その表情や言葉を選んで話す様子からは、拉致被害者がまだ北朝鮮で生きているのだということが伝わってきましたし、曽我さんも彼らのことを思って口ごもっている印象を受けて胸に迫るものがありました。
また、曽我さんご自身も「何としても日本に帰るんだ、だから生きながらえるために我慢しよう」という一念で過ごしてきたそうです。彼女と同じ思いをしている拉致被害者がきっといるはずですし、その方たちがご存命の間に一刻も早く帰国を果たさなければなりません。
日朝の接近に中国と韓国は警戒を強めている?
中山 菅(義偉)官房長官は1日、NHKの番組で、北朝鮮が約束した拉致被害者らの全面的な再調査の進展に合わせて、日本の政府調査団を北朝鮮に一定期間派遣し、調査内容の検証に当たる考えを示したそうです。
調査団のメンバーは、外務省や警察庁などの専門家を想定。北朝鮮がこれまで拉致被害者の調査でずさんな対応を繰り返してきたことを踏まえて、日本側が必要に応じて調査結果の真偽を確かめる狙いがあると伝えられています。
なお、北朝鮮が2008年に再調査で同意した際には、調査団の現地滞在は予定されていなかったとのことです。安倍内閣のもとで、日本側の調査団が現地入りしながら調査内容の検証ができるようになったことは、評価に値するのではないでしょうか。
鷲尾 これは本当に大きな前進です。一方で、私は北朝鮮と中国の関係が非常に悪化しているのではないかと思います。両国は国境が接していますが、おそらく中国が北朝鮮に対して陰に陽に大きな圧力をかけているのでしょう。