東京湾の水蒸気がモヤっと隅田川に流れ込む――そんな5月の週末。

 夏物のTシャツを買いに日本橋に向かった。気に入ったボーダー柄を見つけたが、なんとなく保留。寒くなってきたので帰路に就く。そして、やっぱり買おうと思って、パソコンでそのお店のウェブサイトを見てみる。

 「あった!」

 よし。買おうと思いクリックすると、在庫切れと出た。

 「えっ?」お店には結構在庫あったのに・・・。

 そんな経験。あれば絶対買うのに、結局買えなかった。

オムニチャンネル戦略の「キモ」は何か

 買うと決めてサイトにアクセスしているのだから、店にとっては格好のカモなのに、買えない。店頭やサイトをうろちょろしていたが、売り上げにつながらない。パスは廻っているが、ゴールが奪えない。そんな感じ。

 こんなことが起きる原因は、お店がリアル店舗とウェブ通販の在庫を別々に管理している点にある。そして、在庫管理が別なのは、そもそも売上目標、リソースの配分など、全てが別々の組織であることに起因している。

 それではユーザーの心を満たせないというので、在庫などを一元管理する「オムニチャンネル」戦略が最近の流通業のトレンドだ。オムニとはラテン語由来の言葉で、英語では「all」を意味する。つまり、オムニチャンネルは全チャンネルという意味。