4月29日、オクラホマ州の刑務所である凶悪犯の死刑が執行された。州法で定められた薬殺刑による死刑だったが、死刑囚に注射された薬物が効かず、死刑は中止された。中止の直後、死刑囚は心臓発作で死亡した。

 要約すれば、または一昔前だったら、ざっとこのような短いニュースで終わったかもしれない。

 しかしこの事件には、現在米国の死刑制度が抱える問題が凝縮されていた。そして、議論はとうとう薬殺刑を止め、銃殺刑の復活を訴える州が出てくるほど白熱している。

43分間悶絶して死んだ死刑囚

 死刑囚の名前はクレイトン・ロケット(享年38歳)。彼の死刑執行は、すでに数週間延期されていた。地元の人権派弁護士が、薬殺刑に使用される薬についての情報開示が足りないということで、情報公開を訴えていたからだ。

 ロケットに使われる薬は、オクラホマ州ではまだ試されたことがない新薬だった。州と弁護士の押し問答が続いたが、最終的には州最高裁が、情報開示は十分だと判断し、執行を認めた。 

 そして問題の死刑は行われた。当日、立会人が見守る前で、ロケットは時間差で3つの薬物を注射され、死亡する予定だった。

 ところが2つ目の薬物が注射されると、ロケットは苦しみだし、ベッドの上で激しい呼吸をしながらもがき、歯を食いしばりながら、激痛を訴えた。ロケットが暴れだしたのと、明らかに薬物が効かなかったことで、死刑はここで中止される。立会人との間のカーテンは引かれ、全員退場を促された。

 中止後も、ロケットは苦しみ続け、最初の薬物注射から43分後に心臓発作によって死亡した。オクラホマ州の薬殺刑にかかる平均時間は6分だということを踏まえると、長時間苦しんだことになる。一部始終を目撃した立会人らは、死刑の現実を目の当たりにして言葉を失っていたという。