バンクーバー新報 2014年5月1日第18号

 ジェイソン・ケニー雇用・社会開発大臣は5月24日、短期外国人労働者プログラムの適用を、飲食業界に限り一時停止すると発表した。先週から続く同プログラムを不正利用していた事実が発覚した同業界への対応策としている。

 カナダ人従業員を解雇し、賃金が安いとされている短期外国人労働者プログラムの外国人労働者を優先して雇用している事実が同業界で明らかになった。

 一連の短期外国人労働者プログラム不正適用問題は、CBCの番組により発覚した。本来は、労働者不足を補うために用いられるプログラムで、長年適用されてきたプログラム。しかし、特にここ数年、アルバータ州やサスカチワン州など、天然資源産業が盛んな地域で雇用が同産業に奪われるため、その他の産業で雇用者不足が生じ、このプログラムが利用されてきた。

 関係者によると、ファーストフード店の店員を時給30ドルで募集しても従業員が集まらず、閉鎖する店もあったという。天然資源産業の待遇にはとても太刀打ちできないため、外国人労働者を雇用する状況が続いていた。

 しかし今回、CBCの放送では、大手ファーストフードチェーン店のマクドナルドが、同プログラムを必然性からではなく、別の目的で利用していたことが発覚。適用目的が誤用されたことで非難が集中した。

 また、同番組内で、ブリティッシュ・コロンビア州ビクトリアにあるレストランに長年ウエイトレスとして務めていた女性が、自分の職を短期外国人労働者に奪われたと泣いて訴えた。この光景が、一般カナダ国民の同情を誘う形となり、レストランや同プログラムへの批判が相次いだ。

 こうした経緯から、ケニー雇用相は連邦政府としても早急に手を打つ必要に迫られ、今回の飲食業界に限り、同プログラムの一時停止の発表となった。また、同プログラムを誤用した企業について適切な処置を行うと約束した。

 しかし一方では、これまで法を守り利用してきた関係者からは、ビジネスが成り立たないと悲鳴にも近い声が上がっている。労働者不足は、若者や雇用希望者を対象に穴埋めできるとする主張に対し、そうした求職者が必ずしも飲食店を雇用先に選ぶとは限らない。

 失業者数と労働者不足の職種とが必ずしも一致せず、職に対する需要と供給のバランスが悪いことから、プログラムを一時停止にしただけでは解決しないとの意見も専門家からは出ている。

 保守党政権にしてみれば、急速に批判が大きくなった同プログラムに対して、とにかく沈静化する対策を早急に打ち出すことが先決で、プログラムの穴を見直す作業までは手が回っていないのが実情なのではないかと見ている専門家もいる。

 ケニー雇用相は、同プログラムの一時停止は雇用省が調査を完了するまで続けると語った。ただ、現在カナダに滞在している短期外国人労働者については、今回の措置は適用されない。

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