昨年9月の米大手証券大手リーマン・ブラザーズの経営破綻を境に、金融危機が全世界規模で深刻化した。主要各国は経済再生策に必死で取り組み、その「切り札」として情報通信、つまりデジタル関連投資に注目が集まり始めた。(本稿中、意見にわたる部分は筆者の個人的見解であるとお断りする)
先ずは、オバマ新政権誕生に沸く米国。昨年12月6日、陣営は今後2年間で250万人の雇用創出に向け、経済再生計画を策定すると発表した。新政権は専用サイト「Change.gov」に次期大統領のYouTube演説を掲載。この中で、再生計画の柱の1つとして急浮上したのが、光ファイバー網など新たなブロードバンド基盤の整備だ。
演説の中で、オバマ次期大統領は「情報ハイウエーを更新する」と宣言。「米国のブロードバンド環境(普及率)が世界15位に甘んじているのは受け入れ難い。インターネットを発明した国として、米国のすべての子供たちはオンラインにアクセスできる機会が与えられなければならない」と強調、図書館や学校、病院、そして各世帯にブロードバンド環境をもたらす方針を明らかにした。情報通信分野には全くと言ってよいほど、関心を示さなかった共和党ブッシュ政権との違いが際立つ。
それに先立つ12月1日、米産業界が動き始めていた。57に上る企業・団体が「新政権は国家ブロードバンド戦略の策定を2009年の最優先事項にすべきだ」と訴え、「Call to action」(行動要請)を発表。署名したのは、AT&T、べライゾンなど大手通信会社やグーグルといったネット系企業、コンテンツ事業者、ベンダーのほか、消費者団体、市民団体、労働組合、州・地方政府など。普段は利害錯綜するプレーヤーが呉越同舟で名を連ね、小異を捨ててブロードバンド基盤を至急整備しようという、強力なメッセージを発信した。
米民主党はクリントン政権下でもゴア副大統領が主導し、「NII(National Information Infrastructure)構想」というブロードバンド基盤整備のためのイニシアチブを推進していた。伝統的に、政府支援によるデジタルインフラ整備の加速には積極的だと言ってよい。
英「デジタル」、仏「ニュメリック」が対抗
英国も負けてはいない。10月17日、現下の金融危機を乗り越えるには情報通信分野をテコにする必要があるとして、新戦略「デジタル・ブリテン」を2009年春に取りまとめると発表した。