中国ではここ数年、「ネット世論」なるものが静かに形成され、次第に社会への影響力を高め始めている。
中国のインターネット利用者は既に4億2000万人
中国のインターネットに関する組織「CNNIC(中国インターネット情報センター)」が今月発表した最新統計では、2010年6月末時点でインターネット利用者は4億2000万人に達し、増加の一途を辿っているという。
インターネット利用者のほとんどが大学生以上30代以下の世代が占める。また、ネットメディアの読者だけでなく、新興のポータルサイトのメディア関係者も総じて20代、高齢でもせいぜいが30代前半であり、日本とは事情が大きく違うようだ(JBpressの創業者・編集長は50代で申し訳ありません=編集部注)。
そして、こうした若者たちが中心となって形成されたネット世論が、中国政府にとって驚異となり始めたことはお聞き及びかもしれない。
偏った世代の世論ではあっても、ネットという破壊的に伝播力の強いツールを利用しているため、その勢いと影響力は過去に例のないほどであり、政府はネット世論に注視せざるを得なくなっているようだ。
中国はただでさえ日本よりはるかに広大な国土であり、人口もおよそ10倍いる。その中で、単位人口当たりの事故・事件件数は日本よりはるかに多い中国では、1日に発生する事故や事件の数は、日本では想像できないくらい相当な数に上る。
こうした環境でどのようにネット世論は形成されるのだろうか。
そのキーワードとなるのが、ネットユーザーの「造語」ではないかと思う。チャットや掲示板やブログの中で、雲の間から射す光のような社会情勢単語が作られれば、それは瞬く間に中国のネットを席捲する。
同年代だからこそ「知らずにはいられない」
口コミで話題になれば、若者が編集するポータルメディアがそれを拾ってブームに火をつけ、さらに新聞までもが紹介することも多い。ある地方で起きた小さな事件でも、洒落た造語になるとネットを介して全中国へ一気に広がっていく。
同じ年代層がネットを利用することから、流行の造語の意味を知らなければ学校の友人や職場の同僚に「時代遅れ」とまで揶揄される。それほどの造語の影響力から、一部の中国メディアはネット発の新語を「単語メディア(詞媒体)」と呼ぶようになっている。
日本では、「2ちゃんねる」の中でセンスの光る単語が造られたところで、中国に比べたらその伝播力は桁違いに小さい。ネット利用者の多くに影響を与えているようには見えない。
毎年の年末に「今年を表した1文字」が募集されたり、「草食男子」のようなマスコミ発のような言葉が流れたりしているものの、中国から見ているとメディアに操縦されているように感じてしまう。